マレーシア市場参入のための健康食品関連規制・手続きについて解説
マレーシア市場参入のための健康食品関連規制・手続きについて解説
序論:マレーシアにおける健康食品ビジネスの規制概要

はじめに
本レポートは、マレーシア市場への参入を目指す日本の健康食品関連事業者を対象に、現地の関連法規制および事業開始に必要な手続きを体系的に解説することを目的としています。マレーシアの健康食品市場は大きな可能性を秘めていますが、その成功は複雑な現地規制を正確に理解し、遵守することにかかっています。本ガイドブックが、貴社のマレーシア事業戦略を構築する上での確かな一歩となり、事業成功の礎となることを目指します。具体的な日本からマレーシアへの食品輸出手続きはTakumi International Sdn Bhdにご相談ください。
基本定義の解説
マレーシア市場に参入するにあたり、まず現地の法律が製品をどのように定義しているかを理解することが不可欠です。日本の「健康食品」という概念は、マレーシアでは複数のカテゴリーにまたがる可能性があるため、以下の基本的な定義を把握することが、製品分類とそれに続く規制対応の第一歩となります。
| 名称 | 定義 | 関連法規 |
|---|---|---|
| 医薬品(薬または薬物) | 直接または間接に、薬としての目的で人間や動物に用いられる、またはその目的を持つと主張される物質、製品、物。 | 1952年薬物販売法 第2条解釈 |
| 食品 | 食品または飲料として人間に摂取される目的で製造・販売される物。調理・保存過程で使われる物質、菓子類、ガム等を含む。 | 1983年食品法 第1条解釈 |
| 特別目的食品 | 特別な栄養摂取の必要に適した食品。乳幼児用ミルク、低カロリー食品、ダイエット食品などが含まれる。 | 1985年食品規則 パートVIII |
| 健康サプリメント | 人間の身体機能を保持、増強、改善する目的で食事の補助として摂取される製品。カプセル、錠剤、粉末、液体といった剤形で提供され、ビタミン、ミネラル、ハーブ、アミノ酸などを含む。 | 保健省国立医薬品規制庁発行「医薬品登録ガイド」 |
「食品・薬物境界製品(FDI製品)」の概念分析
マレーシアの規制体系において特に重要なのが、「 食品・薬物境界製品(Food-Drug Interface Products: FDI製品) 」という独自の概念です。これは、その名の通り食品と医薬品の境界に位置し、明確な分類が難しい製品群を指します。日本のいわゆる「健康食品」の多くが、このFDI製品に該当すると考えられます。
FDI製品は、経口摂取用の食品成分と有効成分を組み合わせた製品と一般的に定義されています。自社製品がこのFDI製品に該当するか、そして最終的に「食品」と「医薬品」のどちらに分類されるかによって、適用される規制、登録・許認可プロセス、販売戦略が根本的に変わります。したがって、この分類を正確に見極めることは、マレーシアでの事業展開の方向性を決定づける極めて重要な初期ステップです。
規制当局の役割分担の明確化
製品分類を決定し、それぞれを管轄する二大規制当局の役割を理解することが不可欠です。
保健省食品安全品質管理プログラム(Food Safety and Quality Program: FSQP)
- 管轄: 一般的な「食品」
- 役割: 食品の安全性、品質基準、表示規則などを1983年食品法および1985年食品規則に基づき監督します。健康や医学的な効能を謳わない飲食物は、基本的にFSQPの管轄となります。
国立医薬品規制庁(National Pharmaceutical Regulatory Agency: NPRA)
- 管轄: 「医薬品」(健康サプリメント、FDI製品の一部を含む)
- 役割: 薬物管理庁(DCA)の下部組織として、医薬品の品質、有効性、安全性を確保するための製品登録、ライセンス制度を管理します。より厳格な規制が適用されます。
事業者は、自社製品の特性に基づき、どちらの当局の管轄下に置かれるかを最初に判断し、適切な手続きを進める必要があります。
製品分類基準の評価
製品が「食品」と「医薬品」のどちらに分類されるかは、以下の基準に基づいて総合的に判断されます。
成分:
- 100%食品原料であれば「食品」に分類される傾向があります。
- パラセタモールやグルコサミンといった特定の有効成分を含む製品や、「FDIのネガティブリスト」に記載された成分を含む製品は「医薬品」として扱われます。
剤形:
- ビスケット、麺類、飲料など、伝統的な食品の形状を持つ製品は「食品」と見なされます。
- ソフトジェル、カプセル、錠剤といった医薬品特有の剤形を持つ製品は「医薬品」に分類される可能性が高くなります。
健康上の効能に関する表示(ヘルスクレーム):
- 健康上の利点や薬用目的(例:体重管理、胃腸の健康)を謳う製品は「医薬品」としてNPRAの規制対象となる可能性が高いです。
- 薬用・健康強調表示のない製品は「食品」として分類されます。
分類の判断が困難な場合は、NPRAに対して公式な分類確認を申請することが可能です。
申請手続き:
- 申請フォーム: Form NPRA /413/01-2 - Product Classification Application
- 申請料: 1製品につきRM300
- 申請先: 国立医薬品規制庁(NPRA)
- 住所: Lot 36, Jalan Profesor Diraja Ungku Aziz (Jalan Universiti), 46200 Petaling Jaya, Selangor Darul Ehsan, Malaysia
- 電話: +603-7883 5400
総括と次章への移行
本章では、マレーシアにおける健康食品ビジネスの規制の根幹をなす「製品分類」の重要性とその基準について概説しました。この分類が、後続の章で詳述する具体的な輸入、製造、販売に関する手続きの全ての前提となります。
Takumi International Sdn Bhdからの分類判断の実践的アドバイス
Q1: 「コラーゲンを配合した美容ドリンク」はどちらに分類されますか?
A1: これは典型的なFDI製品です。判断の鍵は「ヘルスクレーム」にあります。単に「美容成分配合」といった一般的な表現であれば「食品」に分類される可能性が高いです。しかし、「肌のハリを改善」「シワを減らす」といった具体的な効果を謳うと、薬用目的と見なされ「医薬品」としてNPRAの管轄下に入るリスクが非常に高まります。実務上、どこまでの表現が許容されるかの線引きは難しいため、マーケティング戦略と規制リスクを天秤にかけ、必要であればNPRAへの事前確認申請を強く推奨します。
Q2: 「錠剤型のビタミンCサプリメント」はどちらですか?
A2: 剤形が「錠剤」であるため、「医薬品」に分類される可能性が極めて高いです。マレーシアでは、カプセルや錠剤といった剤形は、それ自体が医薬品的な性質を持つと解釈される傾向にあります。たとえ成分が食品由来のビタミンCのみであっても、剤形が決定的な要因となり、NPRAへの医薬品登録が必要になると考えるべきです。
1. 「食品」として分類される製品の規制と手続き
導入
自社製品が「食品」として分類された場合、事業者は保健省食品安全品質管理プログラム(FSQP)が定める規制体系を遵守する必要があります。本セクションでは、マレーシアへ食品を輸入、製造、販売する際に求められる法規制、ライセンス取得、実務的な手続きについて網羅的に解説します。
輸入手続きの全体フロー
マレーシアへの食品輸入は、複数の政府機関が関与する多段階のプロセスです。以下にその主要なステップを解説します。
- ステップ1: FoSIM Importへの登録
輸入者および通関業者は、まず保健省の食品安全情報システム「FoSIM Import」に登録する必要があります。これがオンラインでの食品輸入手続きの基盤となります。 - ステップ2: 品目に応じた事前ライセンス・証明書の取得
輸入する食品の種類によっては、輸入許可申請の前に、関連省庁からライセンスや証明書を取得する必要があります。- 肉類、乳製品など: 獣医局(DVS)から輸入ライセンスを取得します。
- 魚介類、水産加工品: マレーシア水産開発局(LKIM)から漁業許可書を取得します。
- 野菜、果物、スパイスなど: 連邦農産物産物マーケティング局(FAMA)から適合証明書(CoC)または免除レター(LoE)を取得します。
- 特定のリスク食品: 肉類、エビ、チーズ、はちみつなどは、輸出国の管轄官庁が発行する獣医局衛生証明書(VHC)、衛生証明書(HC)、分析証書(COA)が必要です。
- ステップ3: SPEED-MAQISとePermitによる輸入許可申請
植物、動物、魚介類など特定の品目を輸入する場合、マレーシア検疫検査サービス局(MAQIS)のポータル「SPEED-MAQIS」に登録し、DagangNetの「ePermit」システムを通じてオンラインで輸入許可を申請します。 - ステップ4: FSQPによる貨物検査とステータス決定
貨物がマレーシアに到着すると、MAQISおよびFSQPによる検査が行われます。FSQPはリスクアセスメントに基づき、貨物を以下の6つのレベルに分類し、対応を決定します。
| レベル | 検査ステータス | 内容と影響 |
|---|---|---|
| レベル1 | 自動承認 (Automatic Clearance) | 検査なしで自動的に通関が承認されます。 |
| レベル2 | 特定書類の確認 (Specific Documents Examination) | 衛生証明書(HC)やライセンス等の関連書類が審査されます。 |
| レベル3 | リスクアセスメント監視 | 書類検査と立ち合い貨物検査が行われます。必要に応じてサンプルが採取されますが、結果を待たずに貨物はリリースされます。 |
| レベル4 | 監視 (Surveillance Monitoring) | 立ち合い貨物検査と監視用のサンプル採取が行われます。貨物は結果を待たずにリリースされます。 |
| レベル5 | 貨物を留め置き、検査後リリース (Hold, Test and Release) | 貨物は留め置かれ、立ち合い検査とサンプル採取が行われます。ラボでの検査結果が基準に適合して初めて通関が許可されます。 |
| レベル6 | 自動却下 (Auto Rejection) | システムにより輸入が自動的に却下されます。 |
- ステップ5: 是正措置または通関
検査の結果、ラベル表示違反などの問題が発見された場合、貨物は留め置かれ、輸入者には3ヶ月以内の是正措置(ラベル修正など)が求められます。是正が不可能な場合は、貨物の廃棄または再輸出が命じられます。問題がなければ、結果は税関の情報システム(SMK)に送られます。その後、輸入者は税関に対し、 輸入申告書(フォームK1)、船荷証券(Bill of Lading)、インボイス、パッキングリスト等 を提出し、最終的な通関手続きに進むことができます。
輸入事業者に必須の登録手続き
食品輸入を円滑に進めるためには、以下のオンラインシステムへの事前登録が不可欠です。
食品安全情報システム(FoSIM)
- FoSIM Import: 輸入者および通関業者が、輸入食品の手続きをオンラインで管理するためのシステムです。税関システムと連携しており、 輸入業務を行う全ての事業者にとって登録は必須 です。
- FoSIM (Domestic): 主に マレーシア国内の食品事業者向け のシステムです。食品製造施設の登録、後述するラベルの事前審査サービス申請、各種証明書の取得申請などに利用されます。マレーシア国内に製造拠点を持つ場合や、ラベル審査サービスを利用する場合は、こちらの登録も必要となります。
SPEED MAQIS および DagangNet ePermit
植物、動物、屠体、魚介類といった検疫対象品目を輸入する事業者は、MAQISのポータル「SPEED MAQIS」への登録が必要です。実際の輸入許可申請は、DagangNetが提供する「ePermit」プラットフォームを通じてオンラインで行います。
品目別の輸入規則と必要書類の分析
2023年関税(輸入禁止)令に基づく規制
特定の食品カテゴリーには、輸入ライセンスや許可が義務付けられています。
- 肉類、乳製品、家禽類加工品: 獣医局(DVS)からの輸入ライセンスが必要です。
- 魚介類、水産加工品: マレーシア水産開発局(LKIM)からの漁業許可書(LFB)が必要です。
- 野菜、果物、スパイス等: 連邦農産物産物マーケティング局(FAMA)が発行する適合証明書(CoC)または免除レター(LoE)が必要です。
ハラル認証の要件
豚肉以外の肉類およびその加工品をマレーシアに輸入する場合、ハラル対応が極めて重要です。
- 調達先: マレーシアイスラム開発局(JAKIM)が認定した海外の屠殺場・加工工場からのみ調達しなければなりません。(2024年3月現在、日本には2箇所の認定施設が存在します。)
- 認証と物流: JAKIM認定の海外イスラム団体が発行したハラルロゴの貼付が必要です。また、輸送時にはノンハラル製品と明確に区別する「ハラル物流」の基準を遵守する必要があります。
- ビジネス戦略上の影響: ハラル認証は法的な義務ではありませんが、人口の約6割を占めるイスラム教徒の消費者にリーチするためには、事実上の必須要件です。認証がない製品は、販売チャネルが外資系スーパーや日本人向け店舗などに限定され、広範な市場アクセスを失います。ビジネスのスケールを考えるならば、ハラル認証の取得は初期投資として不可欠と考えるべきです。
1983年食品法に基づく規制
特にリスクが高いとされる食品には、輸出国の管轄官庁が発行する以下の証明書が求められます。
| 食品 | 獣医局衛生証明書(VHC) | 衛生証明書(HC) | 分析証書(COA) |
|---|---|---|---|
| 食用肉及び臓物 | 〇 | △ | × |
| 食用家禽及び臓物 | 〇 | △ | × |
| 魚及び魚製品 | × | 〇 | × |
| エビ、カニ | × | 〇 | ** |
| チーズ(ソフト/セミソフト) | × | 〇 | 〇 |
| はちみつ | × | 〇 | 〇 |
| 落花生(生) | × | 〇 | 〇 |
| 缶詰肉加工製品 | 〇 | × | × |
| 牛乳及び乳製品 | 〇 | × | × |
凡例: 〇:要、×:不要、 △ :VHCがHC要件を満たせば不要、**:COAは HCに特定の分析対象成分の認証が含まれていない場合に必要。
特別目的食品の認可
乳幼児用食品(粉ミルク、離乳食など)、低カロリー食品、ダイエット食品といった「特別目的食品」は、マレーシアで販売する前に保健省からの事前認可が必要です。特に乳幼児用食品は、認可後に発行される認可コードを製品ラベルに表示することが義務付けられています。
製造事業者に必要なライセンスと優遇措置の評価
製造ライセンスの取得要件
マレーシア国内で食品製造を行う場合、 1975年工業調整法 に基づき、以下のいずれかの条件に該当する企業は、マレーシア投資開発庁(MIDA)から 製造ライセンス を取得する必要があります。
- 株主資本が250万リンギ以上
- 常勤従業員が75名以上
これに満たない小規模製造者は、「製造ライセンス免除確認書」を申請します。
税制上の優遇措置
マレーシア政府は、製造業に対して積極的な税制優遇措置を提供しています。
- パイオニア・ステータス: 生産開始から5年間、法定所得の70%が免税となります。初期の利益率が高い事業に適しています。
- 投資控除(ITA): 認可プロジェクトにかかる設備投資額(適格資本的支出)の60%を、5年間で法定所得の70%を上限に控除できます。大規模な初期設備投資が必要な事業に適しています。
- ハラル食品製造者向け優遇措置: ハラル食品製造者は、より有利な条件(適格資本的支出の100%を法定所得の100%まで控除可能)のITAを申請できます。
【コンサルタントの視点】どちらを選ぶべきか?
パイオニア・ステータスは、利益が安定して見込める場合に単純明快なメリットがあります。一方、ITAは初期投資が巨額で、減価償却費が利益を圧迫するような重厚長大型の事業モデルでより大きな節税効果を発揮します。未利用の控除額を繰り越せるため、長期的な視点での税務戦略が可能です。自社の事業計画と財務予測に基づき、慎重に選択する必要があります。
原材料・設備の輸入税免除
製造に使用する原材料や機械・設備について、輸入税および売上税の免除を申請することができます。特に「 自己申告制度 」により、主関税地域(PCA)に立地する製造者は、機械や設備の輸入税・売上税免除をより迅速に受けることが可能です。この制度を利用するには、事前にMIDAから「 PCAに立地する製造者であることの確認書 」を取得し、税関に提出する必要があります。
食品表示規則の徹底解説
規制の根拠となる法律
マレーシアの食品表示は、主に以下の法律・規則によって厳格に規定されています。
- 1980年価格管理令: 価格表示と基本的な商品ラベル表示を規定。
- 2011年取引表示法: 誤解を招くような虚偽の表示を禁止。特に「ハラル」表示や「パーム油不使用」表示などを厳しく規制。
- 1983年食品法および1985年食品規則: 成分、栄養、アレルギー物質、ヘルスクレームなど、食品表示に関する最も包括的で詳細な規定。
必須表示項目のチェックリスト
1985年食品規則に基づき、食品ラベルには以下の項目を必ず記載しなければなりません。
- 品名
- 原材料リスト(添加物を含む)
- 【2024年1月からの新義務】 主要な原材料の含有率表示(QUID)
- 【2024年1月からの新義務】 食品添加物の国際番号体系(INS)番号
- アレルギー物質の表示
- 正味重量または内容量
- 製造者、梱包者、または輸入者の名称と住所
- 製造国
- 賞味期限(特定食品は義務)
- 遺伝子組み換え(GM)食品である旨の表示(該当する場合)
- 牛肉、豚肉、ラード、アルコールを含有する場合はその旨を明記
特にアルコール含有表示は「 すべて大文字、太字、飾り文字でないフォントサイズ 6以上であること 」という厳格な規定があります。
栄養表示のルール
栄養表示は、特定の食品(シリアル、乳製品、清涼飲料水など)や、栄養強化を謳う食品、特別目的食品において義務付けられています。
- 必須表示栄養素:
- カロリー (kcal)
- タンパク質 (g)
- 炭水化物 (g)
- 総糖質 (g)
- 脂肪 (g)
- 【2024年1月からの新義務】 ナトリウム (mg)
- 表示形式: 100g(または100ml)あたり、および1食分あたりの両方を表示する必要があります。
- 表示例(固形食品)
栄養成分表 1食分の分量: 50g 1パッケージ分の分量: 4
栄養に関する表示(ヘルスクレーム)の分析
ヘルスクレームは厳しく規制されており、許可された表現と禁止された表現があります。
| クレームの種類 | 概要と条件例 |
|---|---|
| 栄養成分含有量表示 | 「低脂肪」「無脂肪」「~の源」「高~」など。各表示には、100gあたりの含有量に具体的な基準値が定められています。 |
| 栄養成分比較表示 | 「従来品より25%脂肪分カット」など。比較対象製品を明記し、栄養素の差が最低25%以上あることなどが条件です。 |
| 栄養成分機能表示 | 「カルシウムは骨や歯の発達を助ける」「鉄分は赤血球形成の要素である」など。科学的に証明された栄養素の生理的役割に関する表示。規定の含有量を満たす必要があります。 |
| その他の機能表示 | 「大豆たんぱく質はコレステロールを減らすのに役立つ」など、特定の食品成分の機能に関する表示。事前に定められた成分と含有量のみ許可されます。 |
禁止されている表現:
- 製品名や表示への使用が禁止される単語: 「健康(health)」「薬用(medicated)」「強壮剤(tonic)」など。これらの単語は、製品が医薬品であるかのような誤解を消費者に与えるため、厳しく禁止されています。
- 禁止される主張:
- 病気の予防、軽減、治療効果を謳う主張(例:「貧血のリスクを軽減」)
- バランスの取れた食事の重要性を否定するような主張
- ある特定の食品があらゆる栄養成分の源として十分であるというような主張
- 消費者に恐怖を抱かせるような主張(例:「この成分がないと危険」)
- 科学的根拠のない主張
【Takumi International Sdn Bhdからのアドバイス】
日本の食品表示で一般的に見られる「体に優しい」「すこやか」といった情緒的な表現も、マレーシアでは医薬品的効果を暗示すると解釈され、規制当局から指摘を受けるリスクがあります。実務上、この規定の解釈で多くの企業が間違いを犯します。客観的かつ事実に基づいた表現に徹することが、トラブルを避ける鍵です。
有機食品の認証と表示
マレーシアで製品に「オーガニック」と表示するためには、政府が認定する以下のいずれかの認証を取得する必要があります。
- Organic Malaysia: 保健省(MOH)が管轄。主に有機食品の 加工事業者 を対象とする認証制度。
- myOrganic: 農業・食料安全保障省(MOA)が管轄。主に有機農産物を生産する 農場 を対象とする認証制度。
これらの認証がない製品に「organic」やそれに類する表示(biological, ecological等)を行うことは法律で禁止されています。
ラベル審査サービス
輸入前にラベルのコンプライアンスを確保するため、保健省は有料の事前審査サービスを提供しています。通関で問題を避けるため、このサービスはコストではなく、事業リスクを低減するための重要な投資と考えるべきです。
| サービス名 | 内容 | 料金(1ラベルあたり) | 所要期間 |
|---|---|---|---|
| スクリーニングサービス | ラベルが規則に準拠しているか否かの結果のみを通知。違反の詳細な説明はない。 | RM250 | 15営業日 |
| アドバイザリーサービス | 規則違反箇所について、詳細なコメントと解説を提供。より具体的で踏み込んだ助言が得られる。 | RM1,000 | 14営業日 |
総括と次章への移行
以上のように、「食品」に分類される製品には、輸入から製造、表示に至るまで、多岐にわたる詳細な規制が存在します。しかし、製品が「医薬品」と分類された場合、さらに厳格で全く異なる規制体系が適用されることになります。
日本の事業者が陥りやすい罠と対策
Q: 日本のラベルをそのまま使えますか?
A: ほぼ不可能です。マレーシア語または英語での表示義務、栄養成分表のフォーマット、アレルギー表示、輸入者情報の記載など、マレーシア独自の要求事項が多数あります。日本向けラベルの上からマレーシア語のステッカーを貼る対応は一般的ですが、そのステッカーの内容は本章で解説した規則を完全に満たす必要があります。
Q: 賞味期限の表示は「Best Before」で良いですか?
A: はい、「Best Before」は使用可能です。ただし、日付のフォーマットが「日、月、年」の順であることなど、細かな規定があります。義務付けられている特定食品以外でも、日付表示は消費者の信頼を得る上で重要です。
2. 「医薬品」として分類される製品の規制と手続き
導入
製品がその成分、剤形、またはヘルスクレームによって「医薬品」(健康サプリメントを含む)に分類された場合、国立医薬品規制庁(NPRA)の厳格な監督下に置かれます。食品とは異なり、医薬品の規制は品質、有効性、安全性の確保を最優先とし、より専門的かつ複雑な登録・ライセンス制度が適用されます。本セクションでは、日本の事業者が理解すべき核心的な要件を解説します。
医薬品登録制度の解説
マレーシアで医薬品を輸入、製造、販売するための絶対的な前提条件は、 NPRAへの製品登録 です。未登録の医薬品を市場に出すことは固く禁じられています。
- 申請システム: すべての登録手続きは、NPRAのオンラインポータル「 QUEST3+ 」を通じて行われます。事業者はまず、このシステムに会員登録し、申請に必要なデジタル署名証書を購入する必要があります。
- 製品登録証保持者(PRH): 登録申請は、「製品登録証保持者(Product Registration Holder: PRH)」によって行われなければなりません。PRHは、マレーシア国内に登記された法人である必要があります。したがって、外国企業はマレーシア国内の法人(現地法人、代理店など)をPRHとして指名し、委任状を発行する必要があります。任命されたPRHは、製品の品質や安全性に関する全ての責任を負います。
- 所要期間と有効期間:
- 標準的な審査期間: 書類提出完了後、 116~245営業日 。
- 登録の有効期間: 5年間 。有効期限の6ヶ月前までに更新手続きが必要です。
事業者に必要なライセンス体系の分析
製品登録に加え、事業活動の種類に応じて以下のライセンスをNPRAから取得する必要があります。
- 輸入ライセンス (Import License): 登録済みの医薬品を海外から輸入するために必要です。
- 卸売者ライセンス (Wholesaler’s License): マレーシア国内で登録済み医薬品を販売(卸売)するために必要です。
- 製造ライセンス (Manufacturer’s License): マレーシア国内で医薬品を製造するために必要です。
これらのライセンスを取得するための前提条件として、事業所が物流管理基準( GDP: Good Distribution Practice )や適正製造基準( GMP: Good Manufacturing Practice )を遵守していることが求められ、NPRAによる査察の対象となります。
また、外資比率が50%を超える輸入・卸売事業者は、NPRAのライセンスとは別に、国内取引・生活費省(MDTCL)からの事業認可を取得する必要があります。
医薬品の表示要件
医薬品のラベル表示は、1984年薬物及び化粧品管理規制と医薬品登録ガイド(DRGD)に基づき、以下の情報を正確に記載することが義務付けられています。これは極めて厳格であり、一つの欠落も許されません。
- 製品名
- 剤形(例:カプセル、錠剤)
- 有効成分名
- 有効成分の含有量
- バッチ番号
- 製造年月日
- 有効期限
- 投与経路
- 保管条件
- NPRAの登録番号(例: MAL19976399X)
- 製品登録証保持者(PRH)の名称と住所
- 製造者の名称と住所
- 注意または特定の表示(該当する場合)
- 梱包サイズ(ユニット/量)
- 防腐剤の名称と含有量(含まれる場合)
- アルコールの名称と含有量(含まれる場合)
- 動物由来の原材料(有効成分、賦形剤)を使用している場合、その由来の申告
- カプセル外殻の原材料が動物由来の場合、その由来の申告
- ビタミン・ミネラル等のサプリメントの場合、推奨一日摂取量(任意)
- 「お子様の手の届かない所に保管ください。(Keep medicine out of reach of children)」 という警告文言(マレー語と英語の両方)
- その他の国で定められた特定の表示要件(該当する場合)
- 特定薬物の場合、「規制薬品(Controlled Medicine / Ubat Terkawal)」の文字
- セキュリティラベル(ホログラムシール)
広告に関する規制と制限の評価
医薬品の広告は、食品よりもはるかに厳しく規制されています。
- 事前認可の義務: テレビ、新聞、ウェブサイト、パンフレットなど、媒体を問わず 全ての医薬品広告は、医薬品広告委員会(MAB)による事前認可が必須 です。
- MABの基本方針: 広告内容は、信頼性があり、正確かつ事実に基づき、客観的でなければなりません。
- 禁止されている表現: 誇張や誤解を招く表現は固く禁じられています。
- 誇張表現: 「奇跡(miracle)」「保証(guarantee)」「すばらしい(fabulous)」など。
- 効果を断定する表現: 「効果的(effective)」「副作用なし(no side effects)」「治療薬(remedy)」など。
ブランド名自体が効果や優位性を示唆するような名称も認められません。
総括と結論への移行
医薬品として分類される製品には、製品登録からライセンス取得、表示、広告に至るまで、食品とは比較にならないほど厳格で多段階の規制が課せられています。これらの要件を正確に理解し、遵守することがマレーシア市場での成功に不可欠です。
医薬品ルートでの重要戦略
PRHの選定が事業の成否を分ける:
外国企業は自社でPRHになれないため、現地のパートナー選定が極めて重要です。PRHは薬事申請の経験が豊富で、NPRAとの良好な関係を築いている必要があります。また、製品の品質・安全性に関する全責任を負うため、信頼性と財務的安定性も不可欠です。安易な代理店契約は、後の大きなトラブルの原因となります。
広告認可は時間がかかる:
MABによる広告認可は、ウェブ広告で30営業日、その他媒体で5営業日とされていますが、実務上は修正指示などでさらに時間がかかることが頻繁にあります。製品発売のマーケティング計画を立てる際は、この認可プロセスに十分なリードタイムを確保することが絶対条件です。
3. 関連法規および管轄官庁リスト
はじめに
このセクションは、本レポートで解説した規制や手続きの根拠となる主要な法律、および問い合わせ先となる政府機関を一覧にしたリファレンスです。より詳細な情報を確認する際や、直接の問い合わせを行う際にご活用ください。
関連法規リスト
| 法律・規則の名称 |
|---|
| 1983年食品法 (Food Act 1983) |
| 1985年食品規則 (Food Regulations 1985) |
| 2009年食品衛生規則 (Food Hygiene Regulations 2009) |
| 1952年薬物販売法 (Sale Of Drugs Act 1952) |
| 1984年薬物及び化粧品管理規制 (Control of Drugs and Cosmetics Regulation 1984) |
| 1956年薬事(広告及び販売)法 (Medicines (Advertisement and Sale) Act 1956) |
| 2011年取引表示法 (Trade Descriptions Act 2011) |
| 2023年関税(輸入禁止)令 (Customs (Prohibition of Imports) Order 2023) |
| 2011年マレーシア検疫検査サービス法 (Malaysian Quarantine and Inspection Services Act 2011) |
| 1975年工業調整法 (Industrial Co-ordination Act, 1975) |
主要な管轄官庁および関連機関リスト
| 機関名 | ウェブサイト |
|---|---|
| 保健省 (Ministry of Health: MOH) └ 食品安全・品質プログラム (Food Safety and Quality Programme: FSQP) └ 国立医薬品規制庁 (National Pharmaceutical Regulatory Agency: NPRA) └ 薬物管理庁 (Drug Control Authority: DCA) └ 医薬品広告委員会 (Medicine Advertisement Board) |
www.moh.gov.my https://hq.moh.gov.my/fsq/ https://npra.gov.my/index.php/en/ https://www.npra.gov.my/index.php/en/about/drug-control-authority-dca/about-the-dca.html https://pharmacy.moh.gov.my/en/content/medicine-advertisements-board.html |
| 国内取引・生活費省 (Ministry of Domestic Trade and Cost of Living: MDTCL) | https://www.kpdn.gov.my/ms/ |
| 農業・食糧安全保障省 (Ministry of Agriculture & Food Security: MOA) └ マレーシア検疫検査サービス局 (Malaysian Quarantine and Inspection Services: MAQIS) └ 獣医局 (Department of Veterinary Services: DVS) └ 農業局 (Department of Agriculture: DOA) └ マレーシア水産開発局 (Fisheries Development Authority of Malaysia: LKIM) └ 連邦農産物マーケティング局 (Federal Agricultural Marketing Authority: FAMA) |
https://www.kpkm.gov.my/ www.maqis.gov.my https://www.dvs.gov.my/ www.doa.gov.my https://www.lkim.gov.my/en/ http://www.fama.gov.my/ |
| マレーシア投資開発庁 (Malaysian Investment Development Authority: MIDA) | www.mida.gov.my |
| マレーシアイスラム開発局 (Department of Islamic Development, Malaysia: JAKIM) | www.islam.gov.my |
| マレーシア税関局 (Royal Malaysian Customs Department: RMCD) | www.customs.gov.my |
| ハラル産業開発公社 (Halal Industry Development Corporation Berhad: HDC) | www.hdcglobal.com |
| ダガンネット・テクノロジーズ社 (Dagang Net Technologies Sdn. Bhd.) | www.dagangnet.com |
マレーシアへの食品輸出に関する相談先
Takumi International Sdn Bhdはマレーシアへの食品輸出に関する総合的なアドバイスを提供しています。本記事はBridge International Asia Sdn Bhdがマレーシア現地の取材で得た情報をもとに作成しています。
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