2026年6月施行|マレーシア雇用パス(EP)新基準と制度改定の全体像
2026年6月からマレーシア雇用パス(EP)のルールは何が変わるのか
マレーシア政府は、第13次マレーシア計画(RMK-13)の目標に基づき、外国人専門職(エクスパット)の雇用に関する新政策を2026年6月1日より施行します。この政策は、マレーシアMADANIの理念に沿ったものであり、外国人労働力への依存度を下げ、国内の優秀な人材(ローカルタレント)の育成と登用を優先することを主目的としています。
主な変更点は、雇用パス(EP)カテゴリーI、II、IIIにおける最低給与閾値の大幅な引き上げ、および雇用期間の制限と「後継者育成計画(Replacement Plan)」の義務化です。政府は、この改革が投資競争力を損なうことなく、高付加価値な投資の誘致と技術移転を促進し、持続可能な経済成長に寄与するとしています。

政策の背景と目的
マレーシア内務省(MOHA)およびマレーシア移民局 外国人専門職サービス部門(ESD)の発表によると、本政策は2025年10月17日の閣議決定を経て策定されました。
- RMK-13との整合性: 外国人労働力への依存を減らし、適切な資格を持つ国内人材の雇用を優先する。
- マレーシアMADANIの原則: 段階的・透明・国益重視の政策を掲げる「マレーシアMADANI」の理念を支援する
- 戦略的雇用: 外国人専門職の雇用を、より戦略的かつニーズに基づいたものへと再構築する。
- 技術移転の促進: 外国人専門職から国内労働力への知識、技能、専門性の移転を体系的に実施させる。
給与基準および雇用条件の改定
2026年6月1日以降に提出されるすべての新規および更新の雇用パス(EP)申請には、以下の新基準が適用されます。

マレーシア内務省のデータを元にCONNECTIONが作成
後継者育成計画(Replacement Plan)の詳細
新政策の中核となるのが「後継者育成計画(Replacement Plan)」の導入です。これは、外国人の雇用期間内に、その役割をローカル人材が引き継げるよう、あらかじめ準備を行う明確で構造化された計画を指します。
計画に含まれる主な内容:
- ローカル人材へ引き継ぐべき役職と業務機能の特定。
- 外国人専門職によるトレーニング、メンタリング、知識移転の実施。
- ローカル人材が必要なスキルや能力を習得するための、合理的な育成期間の設定。
- 生産性や組織運営に支障をきたさないための、業務継続に配慮した運用計画。
モニタリングと罰則:
後継者育成計画の実施状況は、関係機関による文書提出要件や定期報告、評価を通じて監視されます。計画の実施を怠った場合、将来の雇用パス申請が拒否されるなど、不利な影響を受ける可能性があります。
実施スケジュールと移行措置
政府は産業界への影響を最小限に抑えるため、段階的かつ透明性の高い移行プロセスを予定しています。
- 施行日: 2026年6月1日
- 準備期間: 政府は、2026年6月の施行までの期間を、雇用主が人員構造やコスト計画を調整し、秩序ある形で新体制へ移行するための準備期間として設けています。
- 利害関係者との対話: 内務省は今後、産業界、雇用主、関係機関を対象とした対話セッションを開催し、本制度の実施方法や影響について説明するとともに、詳細なガイドラインおよび標準作業手順書(SOP)を順次公表する予定です。
- 既存のパス保有者: 既存の保有者は、今後発表される予定の移行規定に従うことになるとされています。本政策は遡及適用されず、将来に向けた方針です。
経済および社会への期待される効果
政府は産業界への影響を最小限に抑えるため、段階的かつ透明性の高い移行プロセスを予定しています。
本政策が目指す主な方向性
- 投資競争力の強化: 高付加価値産業や先端技術を有する投資家を積極的に誘致することで、投資の質を高め、持続的な経済成長につなげる。
- 国内キャリア機会の拡大: ローカル人材のスキル向上を促進するとともに、専門性に見合った競争力のある賃金水準の実現を目指す。
- 中小企業(SME)への配慮: 構造化されたエンゲージメントの実施や明確なガイドラインの提示を通じて、中小企業が新制度に適応できるよう、柔軟性と十分な移行期間を確保する。
- 国家利益の保護: 外国人労働力への長期的な依存を段階的に縮小し、国内の人的資本を計画的かつ長期的に育成することで、国家全体の競争力を強化する。
本記事のまとめ
2026年に施行される新政策は、マレーシアが「投資家フレンドリー」な姿勢を維持しつつ、自国民の能力開発を経済成長のエンジンとする強い意思を示しています。雇用主には、単なる外国人労働力の確保ではなく、国内人材への知識移転を前提とした、より持続可能な人材戦略への転換が求められています。
本記事はBridge International Asia Sdn Bhdがマレーシア現地の取材で得た情報をもとに作成しています。
当サイトのコンテンツや記事において、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、記載内容について必ずしも正確性を保証するものではありません。無断転載は禁止いたします。
« マレーシア消費者物価指数(CPI)2025年12月版 詳細レポート | 【2026年最新】マレーシア貿易統計が示す4つの変化 »






