2025年マレーシア世論調査:経済不安73%、アンワル首相支持率55%が示す政治安定の現在地

「最近のマレーシアはどうなっているのか?」
物価高への不安を抱えながらも、政治的な混乱は落ち着きを見せつつある。こうした"肌感覚"は、実際のデータと一致しているのでしょうか。
2025年5月、マレーシアの独立系世論調査機関であるMerdeka Centerが実施した全国調査は、その答えを示す重要な資料です。本稿では、同調査(2025年5月12日~23日実施、有効回答1,208人)をもとに、現在のマレーシア社会の実像を読み解きます。
1. 国の方向性:「否定的ムード」からの段階的改善
まず注目すべきは、「国は正しい方向に進んでいるか」という質問です。
- 間違った方向:50%
- 正しい方向:43%
依然として否定的評価が上回っています。しかし、過去数年の水準と比較すると、報告書は「長期的な否定的状況を経て、感情は段階的な改善を見せている」と分析しています。
これは劇的な好転ではなく、「底を打った後の回復局面」にあると見るのが妥当でしょう。
「正しい方向」と回答した理由として挙げられたのは:
- 優れた行政:14.6%
- 良好な経済状況:13.9%
特に行政運営への一定の評価が、心理的改善を支えている点は重要です。
一方で、民族別の認識差も顕著です。
- 華人系回答者の62%が「正しい方向」と回答
- マレー系では27%に留まる
このギャップは、経済政策や社会政策の受け止め方が民族間で異なっていることを示唆しています。マレーシア社会の多層構造を理解するうえで、無視できないポイントです。
2. 最大の課題は依然「経済」

「国が直面する最大の問題」に関する回答では、
- 経済:73%
が最多でした。
ただし、2024年1月の84%からは11ポイント減少しています。これは経済状況の劇的改善というよりも、インフレ環境への"適応"が進んだ可能性を示しています。
具体的な懸念項目は以下の通りです:
- インフレ:33%
- 高い生活費
- 低賃金
- 失業
生活費の上昇と所得の伸び悩みが、依然として国民生活を圧迫している構図に変化はありません。
つまり、「最悪期は脱した」という心理的改善と、「構造的問題は残存している」という現実が併存している状況です。
3. 政治的不安定の「消失」
今回の調査で最も象徴的なのは、「政治的不安定」への懸念が事実上、主要課題から姿を消したことです。
数年間にわたる政権交代の混乱を経て、現政権が一定の安定を維持しているという認識が定着したと考えられます。
しかし、政治的関心そのものが消えたわけではありません。
代わって浮上しているのが、
- マレー系の権利保護
- 民族間の公平性
といった「アイデンティティ政治」に関する論点です。
政治的安定が確保されたからこそ、社会的分配や権利の問題が再び焦点化していると解釈できます。
4. アンワル首相と政府評価の差
評価の分岐も興味深いポイントです。
| 評価対象 | 満足 | 不満 |
|---|---|---|
| アンワル首相 | 55% | 36% |
| 連邦政府全体 | 50% | 48% |
政府全体に対する不満は依然として高い一方で、首相個人への支持は比較的安定しています。
これは、制度や行政機関への不満を、リーダー個人の評価がある程度吸収している状態といえるでしょう。ただし、このバランスは経済成果次第で変化する可能性があります。
結論:安定の次に問われるもの
2025年の世論調査が示すのは、次の3点です。
- 否定的ムードは緩和しつつある
- 経済不安は依然として最大課題
- 政治的不安定は主要懸念から後退
マレーシアは、政治的安定という"土台"をようやく確保しました。
しかし、その上に築くべきは「実質的な生活改善」です。
73%が経済を最大問題と認識している現状を踏まえれば、今後の政権評価はインフレ抑制、所得向上、雇用創出という具体的成果に直結します。
数字は「希望の兆し」を示しています。
それを「確信」へと変えられるかどうかは、次の政策実行にかかっています。
本記事はBridge International Asia Sdn Bhdがマレーシア現地の取材で得た情報をもとに作成しています。
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