マレーシア市場調査詳細

大型買収と国境地域開発で加速するサンウェイの成長戦略

サンウェイのジェフリー・チア:マレーシアとシンガポールを結ぶ架け橋の構築

マレーシア有数の多角化コングロマリットであるサンウェイ・グループの創業者兼会長、ジェフリー・チア氏は、シンガポールでの大型買収やジョホール州における事業拡大を通じて、マレーシアとシンガポールの地域特性を活かした成長戦略を進めています。

本記事では、マレーシア進出やASEAN展開を検討する日本企業の経営層・事業開発・投資担当者に向けて、サンウェイ・グループがどのように国境を越えた事業連携や長期投資を実行しているのかを整理します。あわせて、ジョホール州をはじめとするクアラルンプール以外の地域にも広がるマレーシアの成長機会についても紹介します。
 

戦略的拡大と地域的多角化

サンウェイ・グループは、ジョホール・シンガポール回廊を軸とした地域的拡大を推進しています。この戦略は、シンガポール市場への直接進出と、ジョホール州における大規模統合開発の加速という二つの柱で構成されています。

シンガポール市場への進出:MCLランドの買収

2025年9月、サンウェイグループは公式発表によると、グループ史上最大となる23億リンギットを投じ、シンガポールの不動産会社MCLランドを買収しました。この買収は、シンガポール不動産市場への本格参入を示す動きとして注目されています。

  • 戦略的意図: この買収により、サンウェイはシンガポールの競争が激しい不動産市場において、土地入札や不動産開発により直接関与できる体制を整えたとされています。
  • 事業相性の良さ: サンウェイグループの執行副会長であり、チア氏の娘であるサレナ・チア氏は、「MCLはすでにジョホール州で事業を展開しており、両社の連携は自然な流れだ。」と公式インタビューにて述べています。
  • 柔軟性の確保: サレナ氏はまた、「この買収は我々により大きなコントロールを与えるが、戦略的に意味のある合弁事業には引き続きオープンである」と付け加えています。

ジョホール州における開発加速

サンウェイグループは、シンガポールとの国境に戦略的に位置するジョホール州のSunway City Iskandar Puteri(サンウェイ・シティ・イスカンダル・プテリ)地区と Bukit Chagar (ブキッ・チャガル) 地区の2地区において、開発を進めています。

Sunway City Iskandar Puteri (サンウェイ・シティ・イスカンダル・プテリ)

1,800エーカーの広大な敷地で開発中の統合型タウンシップであり、シンガポールの故リー・クアンユー初代首相が「不毛の地をワンダーランドに変えた」と称賛したサンウェイ・シティ・クアラルンプールの成功モデルを再現しています。

  • 完全なエコシステムの構築: ヘルスケア、教育、物流、観光、住宅といった複数の機能を組み合わせた「完全なエコシステム」の構築を目指しています。
  • 独自施設: 会員制モータースポーツパーク「サー・ジェフリー・チア・サーキット」(全長4.5kmのプライベートレーストラック)は、2026年の開業が予定されています。
  • 主要プロジェクト: シンガポールの不動産会社Equalbaseと共同で、約80億リンギット規模の統合物流ハブを開発するほか、5つ星リゾート、病院、高齢者介護施設、学校、テーマパークなどの整備が計画されています。
  • 長期保有モデル: 開発開始から10年以上が経過し、教育、観光、小売、ビジネス施設を含むエコシステムが形成されつつありますが、チア氏は同プロジェクトを依然として「初期段階」と位置づけています。

Bukit Chagar (ブキッ・チャガル) 統合型多目的開発

Bukit Chagar地区では、マレーシアの国営企業であるMRT社との提携により、約40億リンギット規模の統合開発が進められています。

同地区は、2027年開通予定のジョホールバル~ウッドランズ間の高速鉄道(RTS LINK)のブキッ・チャガル駅に隣接しています。

  • 構成要素: 高級住宅タワー、ライフスタイル・リテールモール、医療センター、ホテルなどで構成される計画です。
  • 戦略的立地: RTS LINKの開通により、ジョホールバルとシンガポール・ウッドランズ間の移動利便性が向上し、周辺地域における商業施設や住宅開発の活性化につながると期待されています。チア氏は、「これらのプロジェクトにより、サンウェイはマレーシアとシンガポールを結ぶ重要な玄関口としての役割を強化する」と述べています。

ジョホール・シンガポール経済特区(SEZ)への期待

チア氏は、国境を越えた投資や労働力の移動を促進するために設立されたジョホール・シンガポール経済特区(SEZ)について、前向きな見方を示しています。

  • 価値サイクルの創出: 「SEZは雇用の創出を通じて所得を押し上げ、それが消費を促進し、最終的に住宅需要の拡大につながる」とチア氏は述べています。
  • コスト優位性: チア氏は、シンガポールと比較したジョホールの競争力について、「土地や不動産をシンガポールの約3分の1のコストで提供できる」と強調しています。
  • 地理的優位性: 一方でSEZについては、「追い風ではあるが依存対象ではない」と述べ、「シンガポールに隣接していなければ、これほど大規模な開発は行われなかっただろう。SEZはあくまでボーナスだ」と語っています。

ヘルスケア事業:成長の柱と越境戦略

ヘルスケア事業は、サンウェイ・グループの中でも近年特に成長が著しい分野の一つであり、同グループの中核事業として位置づけられています。

現在、サンウェイは5つの病院を運営し、約1,700床を有しています。同社は公式に、2030年までに病院数を10施設、病床数を3,500床へ拡大する計画を示しています。

急成長とIPO計画

サンウェイ・ヘルスケアは、マレーシア証券取引所(ブルサ・マレーシア)への上場を予定していると発表しています。

現地メディアなどによると、一部アナリストは同部門の評価額を150億~200億リンギットと試算しており、これはマレーシアの民間医療市場に対する投資家の関心の高さを反映したものとされています。

主要投資家の一つとして、シンガポールの政府投資公社であるGICが挙げられます。GICは2021年に、サンウェイ・ヘルスケアの株式16%を約7億5,000万リンギットで取得しました。チア氏は、GICがサンウェイに対して「長年にわたる信頼」を寄せていると述べており、GICは過去にもサンウェイに投資し、2012年の売却時には約3.5倍のリターンを得たと報じられています。

国境を越えた医療と高齢化人口動態

サンウェイは現在、シンガポール市場を主な対象とした越境型ヘルスケアモデルを構想しています。

  • 診断センターの設置: 現時点でシンガポール国内に病院を建設する計画は示されていませんが、市内に診断センターを設置し、必要に応じて患者をジョホール州のサンウェイ病院へ紹介する方針を明らかにしています。
  • コスト競争力: このモデルについてチア氏は、「同等の医療水準を、相対的に低いコストで提供できる」と述べており、ジョホール州における運営コストの低さと地理的近接性を活かした戦略であると説明しています。
  • 高齢者向け居住施設事業: また、病院の上層階に、自立した生活が可能でありながら医療的な見守りを必要とする高齢者を対象とした居住施設の開発も進めています。クアラルンプールのサンウェイシティで昨年開始されたパイロット施設の運営状況を踏まえ、今後、他地域へ展開される可能性があるとしています。

ジェフリー・チア氏の経営哲学とリーダーシップ

サンウェイ・グループの成長の背景には、創業者であるジェフリー・チア氏の経営哲学と、長期視点に立ったリーダーシップがあります。

「Build-Own-Operate」モデル

サンウェイは、開発した資産を売却せず、長期にわたり保有・運営する「Build-Own-Operate」モデルを採用しています。

その代表例が、約40年にわたり拡大を続けてきたクアラルンプールのサンウェイシティです。

同エリアでは、昨年12月にSunway Square Mall(サンウェイ・スクエア・モール)が開業したほか、サンウェイ大学の新校舎や、約1,200席を備える「ジェフリー・チア・パフォーミングアーツセンター」も整備されています。

これらは、商業機能にとどまらず、教育・文化・コミュニティ機能を一体化させた都市開発を目指す、サンウェイの長期戦略の一環といえます。

アジア金融危機の教訓と評判重視の姿勢

チア氏は、自身の50年以上にわたる経営経験を振り返り、すべての事業が順調だったわけではないと語っています。

アジア金融危機の際には、過大な負債により経営危機に直面しましたが、この経験が現在の経営姿勢を形づくる重要な転機となったと述べています。

チア氏は、

「良い時代は永遠には続かない。だからこそ、レバレッジは慎重に管理すべきだ」

「危機のときこそ、誠実さと謙虚さが人の信頼を左右する」

という二つの原則を重視していると語っています。

また、「損失を被ってでもプロジェクトを途中で放棄したことは一度もない」と述べ、評判は金銭以上に重要であるとの考えを示しています。

RTSプロジェクトの入札時には、マレーシアMRT公社の取締役会に対し、「我々が引き受けると約束すれば、必ずやり遂げる」と直接伝えたといいます。

まとめ:地域連携と長期視点で描くサンウェイの成長戦略

ジェフリー・チア氏が率いるサンウェイ・グループは、シンガポールとジョホール州を結ぶ地理的優位性を活かし、不動産、インフラ、ヘルスケアを軸とした地域密着型の成長戦略を進めています。

MCLランドの買収に代表されるシンガポール市場への進出や、ジョホール州での大規模開発は、国境を越えた人・資本・サービスの流れを見据えた取り組みといえます。

また、ヘルスケア事業や「Build-Own-Operate」モデルに見られるように、サンウェイは短期的な収益よりも、信頼性や持続可能性を重視した経営を一貫して続けています。

アジア金融危機の経験から得た教訓を基盤とするチア氏の経営哲学は、同グループの成長を支える重要な要素であり、日本企業にとってもASEAN市場における長期投資や地域連携を考える上で参考となる事例といえるでしょう。

出典: Sunway Stories, "Sunway's Jeffrey Cheah: Building Bridges Between Malaysia and Singapore" (2025年11月5日発行)


本記事はBridge International Asia Sdn Bhdがマレーシア現地の取材で得た情報をもとに作成しています。
当サイトのコンテンツや記事において、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めていますが、記載内容について必ずしも正確性を保証するものではありません。無断転載は禁止いたします。

大型買収と国境地域開発で加速するサンウェイの成長戦略

マレーシア市場調査サービスはBridge International Asia Sdn Bhdへ

2014年から10年以上に渡って、マレーシアに深く根差して、現地情報やネットワークを積み上げてきたBridge International Asia Sdn Bhdは、大手企業や公的法人、日本政府の組織などからご依頼をいただいた豊富な調査実績があります。以下のお問い合わせフォームもしくはBridge International Asia Sdn Bhdのマレーシア市場調査サービスからお問い合わせください。
 

マレーシア進出、市場調査などについてのお問い合わせ

市場調査を依頼

マレーシアの市場調査を依頼する

マレーシアに密着したBridge International Asia Sdn Bhdの現地コンサルタントにマレーシアの市場調査を依頼することができます。
 

マレーシアの市場調査 

メンバー登録について

情報提供サービス

メンバー(登録無料)がご利用いただけるサービスです。
 
  • ビジネスニュース配信
  • 市場調査レポート配信
  • メルマガ配信
  • ウェビナー開催
  • 専門家をご紹介

 
 

営業代行サービス

マレーシアで新規顧客、キーマンへのアプローチをサポートいたします。
営業代行サービス
 

事業サポートサービス

マレーシアの事業を推進するための専門的なサービスをご提供いたします。
 
 

日系企業データベース

マレーシア日系企業の情報を検索できる日系企業データベース
企業データベースへの登録および更新は企業リスト入力フォームからご依頼ください。
 

マレーシア進出 はじめの一歩ガイドブック

マレーシアに進出される企業向けのガイドブック(17ページ構成)
今すぐPDFファイルをダウンロード

   

サイト運営会社

『CONNECTION』は
Bridge International Asia Sdn Bhdが運営しています。

Bridge International Asia Sdn Bhdは日本とマレーシアの架け橋となり、貴社の東南アジアでのビジネス展開をご支援いたします。

  • ビジネスコンサルティング事業
  • デジタルマーケティング事業
  • インサイドセールス事業
  • システムソリューション事業

マレーシア進出やIT導入のご相談はこちらまでお問い合わせください。