マレーシア起業家 | 阿部慎吾氏|インタビュー

マレーシア起業家 | 阿部慎吾氏|インタビュー

左)阿部慎吾氏、右)Dr.マハティール元首相

会社名:Bridge International Asia Sdn. Bhd.
代表者:Managing Director & CEO 阿部慎吾
・2014年日本マイクロソフト退職
・同年家族でマレーシア移住
・2015年5月 Bridge International Asiaを起業してManaging Director & CEO に就任
事業内容
・ITビジネスコンサルティング
・日系IT企業 プロモーション事業
・IoT ソリューション事業
・デジタルマーケティング事業
・インサイドセールス事業
 

なぜマレーシアで起業したのですか?

海外でIT分野での起業を考えたときに、ASEAN諸国のなかでもマレーシアは起業する場所として適していると感じました。
マレーシアは「IT産業の発展によってマレーシア全体の産業を高度化させる」という考え方をもっており、海外のIT企業の誘致にも積極的です。IT企業を対象に「MSCステータス」という優遇制度として用意して、税制面やVISA発行の特典を提供したり、マレーシア国内の産業界やアカデミックのエコシステムとの連携を促進するための機会を提供しています。

シンガポールも選択肢の一つだったのですが、シンガポールで生活しながらゼロから起業するにはコストが高すぎると判断しました。ある程度の資本力があって、すでにビジネス基盤があるのであればシンガポールも有力な選択肢になると思います。
 

マレーシアで起業するメリットはありますか?

業種によって異なりますが、IT企業の場合、外資100%で設立することができるのはメリットと思います。
他のアセアン諸国の場合はローカル資本が入っていないと法人を設立できないなど規制がある場合が多いです。
最低資本金もRM1(1リンギット)からとなります。会社設立するだけであれば、スモールスタートできるのがメリットといえます。

また、日本ではあまり得られない多文化、多民族の環境のなかでビジネスを行うこともメリットだと思います。マレーシア人の多くが英語や中国など多言語を話すことができます。世界市場を目指す企業にとって、マレーシアで拠点を持つメリットは大きいと思います。  

逆にマレーシアで起業するデメリットはありますか?

会社設立するだけであれば、資本金はRM1からですが、実際には自分自身の就労VISAを設立する会社で取得する場合はRM50万(50万リンギット)以上の資本金が必要となります。(業種によってはRM100万以上が必要となります。)この点は注意が必要です。

マレーシアからみて、外国人であるからにはVISAなどマレーシアの政策に左右されるところは避けられません。幸いにも政権交代後も政府の政策が安定しているので、多くの心配をする必要はありませんが、外国人に対する政策には注意をしておく必要はあります。

また、マレーシア国内に目を向けますと、年々、人件費が上昇しています。スキルや経験によって給与の幅がありますがIT人材は他の職種よりも給与水準が高いです。技術力をもっている人材は日本と変わらない給与水準となっています。いわゆるオフショア開発のようにコスト削減を目的にした進出先としてはマレーシアは向いていません。
 

会社を設立する手続きはどのようにしましたか?

会社設立の手続きは信頼できるコンサルティング会社(カンパニーセクレタリ)を見つけることからはじめました。
マレーシアでは、日系、ローカルの様々な会社が会社設立手続きをサポートしています。私の場合、知人から紹介を受けた日系のコンサルティング会社に依頼して、現在も継続してサポートをもらっています。専門的な分野は専門家に依頼するのが早いです。

会社の設立手続き自体は1か月程度もあれば完了します。
 

マレーシアに移住する前から現在のビジネスを考えられていましたか?

大きな枠組みとしては考えていました。
マイクロソフトで勤務していたころから、多くのIT企業とのコネクションがありましたので、そのようなIT企業とパートナーシップを結び、連携していくことは想定していました。 ただし、マレーシアの市場環境やどのようなプレイヤーいるのかはほとんど分からなかったので、実施に移住してから様々な会社や人に会いに行って情報を集めていきました。 そういう意味ではゼロからのスタートでしたので、試行錯誤のなかで現在の会社の形が作られていったことになります。

やっぱり現場に来てみないと分からないことがたくさんあります。想定されるお客様に会ってみて、色々状況を聞く中で、実際のニーズがわかることも多いです。仮説と検証の繰り返しのなかで、事業内容を少しずつ適用させていく必要があると思います。
 

マレーシアで起業家のネットワークはあるのですか?

海外に進出した日本人の起業家が参加するWAOJE(ワオージェ)というグループがあって、クアラルンプール支部もあり私も参加しています。業種を問わず、様々な分野で活躍する起業家が集まっていますので、多くの刺激を受けています。慣れない国での起業となりますので、毎日のように問題や課題が発生するのですが、そのようなときにどのように乗り越えてきたのかなど、参考になることも多いです。毎月一回は集まって情報交換しています。

マレーシアの政府系機関とはどのような連携を行っていますか?

IT業界ということもあって、MDEC(マレーシア デジタルエコノミー公社)とは頻繁に連携しています。また、セランゴール州の製造業向けに人材開発を行っているSHRDC、サイバージャヤのスマートシティ化を進めているCyberview社とも提携しています。マレーシアの政府系機関や業界団体と連携することで得られる情報量が格段に増加しました。

今後の事業展開について教えてください。

マレーシアでは産業界全体でIndustry4.0を目指す国家施策として、2018年に「Industry4WRD」が発表されました。この方針に基づいて、特に製造業の分野でデジタル技術を活用した高度化を目指す取り組みが進められています。
もともと、製造業の分野で強みがある日本の技術、ソリューションはマレーシアでも求められていますので、この分野でのソリューションをマレーシアで展開していくことに貢献してきたいと考えています。

具体的にはクラウドサービスやIoTソリューションの分野で多くの日本企業とパートナーシップを結び、共同プロジェクトを立ち上げています。まだまだ手つかずの分野が多くありますので、非常に大きな可能性を感じているところです。

その他のメディア取材

■ 『月刊テレコミュニケーション8月号』掲載 2020年8月
<企業ネットワーク最前線> IoT市場、次はマレーシアを狙え! インダストリー4.0でポテンシャル大

  ■ヤッパン号 2018年5月
社内の雰囲気・仕組みづくりで勤怠に対する意識変革を促進

■日経CNBC 2018年3月放送
「熱狂ASEAN 巨大市場を狙う起業家たち」にてマレーシア取材のナビゲーター役として出演
■マレーシアマガジン 2017年7月
マレーシアにICT企業が続々と進出する理由

■NNA アジア経済ニュース 2017年6月
【アジアで会う】阿部慎吾さん TKインターナショナルCEO 第156回 構想17年の起業と海外移住(マレーシア)

■アジアマガジン 2016年10月
日本マイクロソフトで17年の経験を経てマレーシアで独立起業!阿部さんに取材!

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阿部慎吾さん

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 TK International Sdn Bhd
CEO 阿部慎吾さん

愛媛県出身。日本マイクロソフトにて17年に渡り支店長や営業部門のマネージメントなどを経験したのち、2014年にマレーシアでTK International Sdn Bhdを起業。 日本とアジアを結び、地域社会の未来を創ることを目指して、クラウドサービスやデジタルマーケティング分野で日系IT企業との連携を深めている。マレーシアの起業家

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