マレーシアにおけるノミニー(Nominee)とは?
マレーシアで会社を設立・運営する際、実務上よく用いられるのが Nominee(ノミニー)制度です。 これはマレーシア会社法の枠内で認められた仕組みですが、 近年の法改正により、より高い透明性とコンプライアンスが求められるようになっています。
ノミニー制度とは:名義と実質所有の分離
「ノミニー」とは登記上の名義人を指します。 これに対し、実際に株式を所有し利益を享受する人物は 実質的利益所有者(Beneficial Owner:BO)と呼ばれます。
マレーシアではコモンローに基づく信託(Trust)の概念により、 名義上の所有権と実質的な支配権を分離することが法的に可能とされています。
ノミニー取締役(Nominee Director)について
マレーシア会社法2016(Section 196)では、 非公開会社に対し少なくとも1名のマレーシア居住取締役の選任を義務付けています。 外資100%で進出する場合、この居住要件を満たすために ノミニー取締役が活用されるケースがあります。
例えば、日本から新規にマレーシアに進出する場合、まだマレーシアに正式に居住できるビザなどを取得されていないため、登記する本人が居住取締役になれない場合があります。このような場合においてマレーシアに居住されていて信頼できる人物を居住取締役に選任することになります。
【重要】
ノミニーであっても、法的には通常の取締役と同一の義務と責任を負います。 任命者の指示よりも「会社の最善の利益」を優先する必要があり、 法令違反があった場合には罰金、禁錮刑、取締役資格停止の対象となります。
ノミニー株主(Nominee Shareholder)について
ノミニー株主とは、株式を名義上保有する株主を指します。 配当受領権や議決権などの実質的権利は、 信託証書(Trust Deed)やノミニー合意書により、 実質的所有者(BO)に留保されます。
実質的利益所有者(BO)の開示義務(最新規制)
2024年4月の会社法改正および2025年施行の新規則により、 BO情報の透明性は大幅に強化されました。
- 特定と報告の義務: 20%超の議決権または支配権を持つBOを特定し、 マレーシア企業委員会(SSM)へ登録・更新する必要があります。
- 重い罰則: 報告義務違反の場合、最大50,000リンギの罰金または1年以下の禁錮刑が科される可能性があります。
実務上の見落とせないリスク
① 銀行口座開設の難化
銀行はノミニー構造を厳格に審査します。 BOの本人確認や資金源の説明が不十分な場合、 法人口座の開設が拒否されるリスクが高まります。
② 取締役の個人保証問題
賃貸契約や銀行融資で求められる個人保証を ノミニー取締役が拒否することで、 事業展開が停滞するケースがあります。
③ 関係解消時の紛争リスク
名義変更時のトラブルを防ぐため、 日付空欄の株式譲渡証書や 事前署名済みの取締役辞任届を 適切に保管しておくことが重要です。
メリット・デメリット比較
| 項目 | メリット | デメリット・リスク |
|---|---|---|
| 法的要件 | 現地居住取締役要件を即座に満たせる | 会社法上の重い責任が発生 |
| 秘匿性 | 登記簿上の氏名を伏せられる | SSMへのBO報告は必須 |
| 銀行審査 | 現地窓口として機能 | 審査が厳格化 |
ノミニーの見つけ方
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本記事のまとめ:
ノミニー制度は有効な手段である一方、 最新のBO開示規制を正しく理解し、 信託証書(Trust Deed)を含む法的書類を適切に整備することが、 安全かつ持続的な会社運営の鍵となります。
※本記事は2026年1月時点の法規制に基づいています。 実際の設立・運用にあたっては、必ず現地の法務・税務専門家へご相談ください。





