【マレーシア市場調査】2020年マレーシアのEC市場、越境ECを解説
2019年のGlobalWebIndexによる調査によると、現在マレーシアでは2600万人以上もの方がインターネットを使用しており、16歳から64歳までのうち80%の方がオンラインショッピングをしたことがあると答えています。 マレーシアは東南アジア近隣諸国よりはるかにオンラインショップ利用率が高い国ですが、利用者あたりのEコマースの収益(ARPU)は未だ世界平均の4分の1と世界基準で見ると低い状態です。 しかし、マレーシアでのオンラインショッピングの支出は2018年より24%増加しており、またマレーシア政府がオンライン経済を国家戦略の優先課題にしているため、EC市場は今後さらに成長していくと予想されます。
旅行部門がけん引するマレーシアのEC市場
マレーシアのEC(電子商取引)において、商品・サービスは大まかに8つに分類されます。
- 衣服・美容 [Fashion & Beauty]
- 電子機器(スマホ、パソコン、カメラなど) [Electronics & Physical Media]
- 食品・トイレタリー [Food & Personal Care]
- 家具・家電 [Furniture & Appliances}
- おもちゃ・DIY [Toys, DIY, Hobbies]
- 旅行関連(宿泊なども含む) [Travel include Accommodation]
- デジタルコンテンツ(音楽配信サービスなど) [Digital Music]
- 音楽・ゲーム・映像ソフト [Video Games]
このうち1~5を合わせて消費財(Consumer Goods)としています。
Statist社のDigital Market Outlook 調査によると、2018年はマレーシアでは60億米ドル以上オンラインショッピングに費やしており、消費財(①~⑤)の合計支出が、旅行関連(⑥)の支出より上回る結果となりました。
2008年でオンラインの消費財の合計支出は31億米ドルに達し、Eコマース総支出の51%を占めました。オンラインの消費財支出の内訳では電子機器部門が最も多く、全体の27%を占めています。衣類・美容部門も引けを取らず、年間消費額は7億7100万米ドルで25%を占めています。
しかし、2018年のマレーシアのオンラインにおける消費財の一人当たりの平均支出はわずか159 米ドルであり、世界平均の634米ドルと比較すると大幅に下回っています。
また、2018年は国内のインターネット利用者がオンラインショッピングで27億米ドル以上を旅行関連に費やしており、依然として旅行関連部門がマレーシアのオンライン経済の重要要素であることが分かります。
各部門のマレーシアEC市場成率
Statista社による調査によると、マレーシアのEコマースにおいて総支出が前年より24%増加しており、著しく成長していることがわかります。
旅行関連部門は成長率は18%ほどですが、支出は2017年から4億米ドルの増加しました。また、すでに国内経済市場の半分以上を占めている消費財(①~⑤)ですが、成長率約30%で支出は2017年から7億3000万米ドル以上増加しており、まだ急速に伸び続けています。消費財の中でも、食品・トイレタリー(③)、家具・家電(④)、おもちゃ・DIY(⑤)の3部門はわずか1年でかなり大きく成長しています。
特に注目されているのはデジタルコンテンツと食料品
デジタルコンテンツ
デジタルコンテンツの市場は、東南アジアの他国と一貫して、現状そこまで大きくはありません。しかし、2018年マレーシアでは、デジタルコンテンツにおいて、ビデオゲーム、音楽配信サービス、動画配信サービス(Netflixなど)、オンラインニュース及びオンライン書籍などに2億3600万米ドル分が消費されました。そのうち音楽配信サービスの支出は3000万米ドルで、シンガポールに次いで二番目に多い結果となりました。また、Scribd.comでは、マレーシアの月間合計アクセス数でSimilarWebの上位10位にランクインしており、既にデジタルコンテンツが多くのインターネット利用者に受け入れられています。
食料品
他の東南アジアの国と同じく、Eコマースの食料品部門は急速に成長しており、2018年のマレーシアの年間支出は前年より39%の増加で、Statistaのランキングでシンガポールに次ぐ2位の成長率となりました。食品やトイレタリーは最も頻繁に購入されるものであり、オンラインへの移行によってさらにシェアが拡大する見込みです。また、オンラインショッピングに対する信頼が高まることで、部門を問わずEC市場全体が成長していくでしょう。
マレーシアでは2018年はオンライン食料品店での買い物に計4億8300万米ドル費やされており、2017年より1億3500万米ドル増加しています。マレーシアの実店舗販売を含む食料品市場全体で見てみると、オンライン食料品店の市場は2.3%を占めています。
eMarketerのデータによると、マレーシアで食料品の購買がオンラインに移行すれば、支出額で米国を超える可能性があるとされています。一方で、調査会社IGDは、2022年のマレーシアのオンラインショッピングにおける食料品支出は依然としてほぼ同じ割合を占めると予測しており、マレーシアのオンライン食料品店に対する見積もりと予測についてまだ大きな差があると示唆しています。
様々な見解はありますが、一貫してオンライン食料品店は今後数年間で力強い成長を遂げると考えられています。
マレーシアを代表するEC小売業者(ショッピー、ラザダ、レローン)
マレーシアのオンライン経済では、地方ブランド、ローカルブランド、グローバルブランドが上手く組み合わさっており、ShopeeやLazadaがECサイト全体で優位に占めています。
Shopee
SimilarWebのデータによると、Shopeeのマレーシアサイトは月間訪問数が国内1位で、月に2200万人以上がサイトに訪れています。
関連情報
Lazada
2011年ドイツのロケットインターネット社によって創設されたLazada(ラザダ)は、現在拠点をシンガポールに置いて運営しています。2016年にアリババグループの傘下となりました。
LazadaもShopeeに引けを取っておらず、同社のマレーシアサイトの月間平均訪問数は2100万件となっています。また、Lazadaはモバイルアプリでは、Shopeeより月間訪問数が上回る結果となりました。
東南アジアではあまり浸透していないクレジットカード決済だけではなく、代金引換にも対応しています。
レローン(Lelong)
1998年創業のマレーシア老舗マーケットプレイスで、BtoC、BtoBビジネスを展開してきた地場企業。ラザダが参入するまではマレーシアでNo.1を誇っていた。レローンの運営会社であるインターベースリソーシズ は、レローン以外にもエルモール(Lmall)、プリティMY(Pretty.MY)、スーパーバイ(SuperBuy)、タッチポイント(TouchPoint)、ネットペイ(NetPay)の5つのブランドでマーケットプレイスを運営している。
日本からマレーシアへの「越境EC」は可能
「越境EC」とは、マレーシアなど海外の購入者がオンラインマーケットプレイスなどを通じて日本の商品を「個人輸入」することです。Shopee、Lazadaともに日本からの越境ECに対応しています。モール型ECサイトを展開するShopeeは、これまで日本からの越境ECはできませんでしたが、2019年より日本から台湾と東南アジア4ヵ国(シンガポール・タイ・マレーシア・インドネシア)への越境ECが解禁となりました。Shopeeでは、日本から越境ECを行うにあたり、法人でも個人でもどちらでもShopee(ショッピー)に登録し、越境ECによるオンライン販売を営むことができます。
Lazada(ラザダ)は、マレーシアでの個人EC出店にはNRIC(マレーシア国民IDカード) を必要としていますので日本人個人による出店はできませんが、法人登録があれば日本から越境ECを行うことができます。
「越境EC」の出店方法
Shopee(ショッピー)による越境ECの出店Shopee(ショッピー)は2019年に日本オフィスを設立し、日本語での出店サポートが可能となりました。越境ECを目指す出店者は、出店・出品するにあたり日本語で問い合わせることや、書類を提出することができます。(商品情報は英語が必要)。 出店を希望する個人や法人は、Shopee日本越境ECチームを通してアカウントを開設することになります。
Lazada(ラザダ)による越境ECの出店
Lazada(ラザダ)は東南アジア6ヵ国以外では中国、香港、韓国に拠点がありますが、2020年6月現在、日本に拠点はありませんので、日本語でのサポートは行っていません。Lazada(ラザダ)に出店する際には、まず「ローカルセラー」と「グローバルセラー」という種別がありますが、越境ECを行う場合には「グローバルセラー」を選択します。
「グローバルセラー」は、登録者がラザダの進出している東南アジア6ヵ国へ越境EC出店を行い、直接販売することが可能となります。
部門別でみる人気のECサイト
- 衣類・美容部門
- ファション美容系商品はマレーシアのオンラインで買い求められることが多く、代表的なローカルファションサイトZaloraはAppAnnieのランキングでトップ10に入っています。また、マレーシアでは韓国製品も人気があり、11StreetのモバイルアプリはAppAnnieのランキングで4位にランクインしています。
- 電子機器部門
- Microsoft.comはマレーシア国内のECサイトのトップ10入りしており、電子機器が国内のオンラインでの消費財支出の最大シェアを占めています。
- 旅行関連部門
- 旅行サイトは電子商取引先として最も多く利用されており、AirAsia.com、Agoda.comはSimilarWebのサイト訪問数ランキングで両者トップ10に入っています。
- ローカルサイト
- Mudah.myはマレーシアで人気があり、SimilarWebによる月間平均サイト訪問者数は1000万件以上を集めています。
- グローバルサイト
- Taobao、Amazonなどの海外ショッピングサイトも支持されており、どちらもSimilarWebのランキングでトップ10に入っています。
大手配車サービス会社Grabは、現在336都市8カ国で利用されており、東南アジアで1億3000万件以上モバイルアプリがダウンロードされています。配車サービスの他に、モバイルアプリを通して食品宅配サービスや物流サービスなども行っています。これまで、同サービス会社のUberと競合していましたが、2018年3月にGrabがUberの東南アジア事業を買収したことで、同地域で唯一の主要企業になりました。
マレーシアの通商産業省のDarell Leiking大臣によると、インダストリー4.0及びオンライン経済の国家戦略について、公的機関と民間企業で協力して進めていく方針で、Grabマレーシアの代表Sean Goh氏は、政府と密接に関わり協力して、国民とWin-Winの関係で且つイノベーションに繋がる規制や政策を発展させていきたいと述べています。
2017年には、マレーシアでQuulo Venturesが配車サービスに参入しました。Quulo Venturesは、2018年9月にこれまでのモバイルアプリを改新させ、定額制で低価格で乗れるという戦略で同運輸業界で再スタートを切っています。
スーパーマーケットや食料品専門店もEC市場へ
ShopeeとLazadaはマレーシアのEC市場で大きなシェアを持っていますが、実際にそれぞれの収益が食料品の購入にどのくらい起因しているのか詳細は分かっておりません。
実店舗チェーン(スーパーマーケット)のTescoは、国内の同業社との比較で月間サイト訪問数が約50万件と最も多く、他の実店舗チェーンのJaya GrocerとMydinもまたオンラインショッピングで波に乗って来ており、毎月のサイト訪問数はそれぞれ10万件以上に及んでいます。
しかし、マレーシアのオンラインショッピング全体では2千万人が消費財の購入で利用しており、さらに食料品の購入頻度を考えると、これらの数値は非常に低いとされます。
マレーシアの大手の実店舗チェーンでは、自社のECサイトではなく、HppyFreshと提携して商品の宅配サービスを行なっています。実際に、Cold StorageやGiantのウェブサイトではオンラインショッパーに対してHappyFreshのサイトに直接誘導をしています。
さらに、ここ数ヶ月で、オーガニック商品などを提供する食料品専門店もマレーシアでオンライン市場に参入して来ています。これらのサイトは勢いを増しており、Signature Marketはすでに月間平均サイト訪問数で10万件超えています。
マレーシアのオンラインショッピングの傾向
マレーシアのインターネット利用者のうち、パソコン使用者37%、スマートフォン使用者62%という内訳で、ウェブサイトだけでなくモバイルアプリもまたオンラインショッピングで利用されています。中でも、Taobaoのモバイルアプリはマレーシアでかなり利用されており、特に中華系マレーシア人に熱く支持されています。
また、マレーシアのオンラインショッパーの傾向として、ショッピングカートには入れたものの結局買わなかったり、会社や製品の情報をだけを見に来たり、ウィンドウショッピングを目的としてサイトに訪問したりすることも多く、サイト訪問数やランキングに加えて実際の購入者数や支出も重視する必要があります。
マレーシアEC市場、越境ECのまとめ
マレーシアのEC市場は、世界的に見るとまだ大きい市場とは言えませんが、データから見ても現に成長している市場であり、今後数年間で確実に伸びていくと予想されます。
旅行関連の商品サービスが現在もオンライン経済の柱となっていますが、消費財の成長も見逃せません。今注目されているデジタルコンテンツと食料品は勢力をあげてきており、特に購入頻度の高い食料品やトイレタリーは、あらゆる企業でEC市場への参入が始まっています。
配車サービスでは新たな競合を迎え、規制や政策については民間企業と公共機関で協力して発展させていく方針です。
オンライン食料品店での市場競争も勢いを増しており、限定された食品を扱う専門店やモバイルアプリへの適応、宅配サービスとの連携など、あらゆる戦略で参入してきています。
越境ECの分野では、各ECプラットフォームが日本に拠点を開設したり、サポートを拡充するなど越境エリアが拡大しています。越境ECの取り扱い商品や対象国も確実に増えていくことが予想されます。
EC市場は、マレーシアの国家戦略によってさらにオンライン経済に注力していくため、かなり期待されています。各部門でどのような戦略を取るのか、今後の盛り上がりに注目です。
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