マレーシアの自動車産業を解説 |関連資料ダウンロード
人口6億人を有するASEANの中心に位置するマレーシアは、多くの国際的な自動車製造業者や関連会社にとって、安定した政治、経済基盤と整備されたインフラによって投資先として魅力的であるだけでなく、技術的に優れた労働人材によって多くの機会を提供している国です。
マレーシアの自動車産業概要
自動車産業の国家プロジェクトとして、PROTON(プロトン)とPERODUA(プロドゥア)が設立されました。
このプロジェクトによってマレーシアは自動車の組立地から自動車生産者へと変容します。
今日、タンジュン・マリム(Tanjung Malim)にあるプロトンの工場ではロボット技術を活用し全自動化され、大量生産と高い効率性を実現しています。
こうした自動車産業の発展は、エンジニアリングやそれに関連する周辺領域の産業成長を加速させるだけでなく、技術や工学の発展にも貢献してきました。
マレーシアでの自動車所有率はASEANの国の中でも上位に入ります。ホンダやトヨタ、日産、メルセデスベンツ、BMWといった世界有数の自動車企業がマレーシアに拠点を持ち、その増え続ける消費者の需要に応えています。
2017年には、プロトンの株を買収したGEELYジーリー(中国の自動車製造会社)がマレーシアを通じてASEAN市場へと参入する意欲があることを表明しました。
ZFやデルファイ、コンチネンタル、日本化薬、河村化工、明石機械工業、デンソー、ボッシュといった国際的自動車部品メーカーも同様にマレーシアに拠点を持ち製品を販売しています。
自動車産業の国家施策
世界的に激化する競争とグローバルな産業ネットワークの拡大に対応するために、マレーシア政府はマレーシア国内自動車産業の国家施策であるNAP(The National Automotive Policy)を発表しました。
国内の自動車産業の性能向上と競争力を高めるために2009年NAPは見直され、新たにグリーンイニシアティブや技術発展、自動車産業におけるエコシステム拡大に注目することを方針として定めた2014年度NAPが発表されました。
旧来のNAPで掲げられていた目標以上に経済成長に勢いをつけ、長期的な実行可能性と競争力を目指しています。
2014年から今へと続くNAP目標
2014年に発表されたNAPでは以下の目標が掲げられていました。
- 国内自動車産業の競争力と持続性の推進
- EEVs(エネルギー効率の良い自動車産業)においてマレーシアを地域的なハブ化する
- 適切な手段による付加価値の増加
- ブミプトラ企業が全体のバリューチェーンへと参加することを促す
- 低価格で安全で質の良い商品を消費者に提供する
この政策の中心はマレーシアのビジョンでもあるEEVs(エネルギー効率の良い自動車:energy efficient vehicle)のハブとなることです。マレーシアがEEVsのハブ化することで、自動車産業のすべてのバリューチェーンを強化されるだけでなく、環境保護や高所得雇用の創出、技術移転、ローカル企業にとっての新しい経済機会を作り出すことへとつながることが期待されています。
ASEANの自由貿易圏
AFTA間の合意によって、マレーシアがASEAN諸国からCKD[1]とCBU[2]自動車を輸入する場合、関税は0%もしくは5%へとそれぞれ軽減され、ASEAN諸国以外からの輸入の場合、CKD自動車は0-10%、CBUの場合は30%まで軽減されました。
これに伴い政府収入を維持するために、現地で製造組み立てされた自動車・輸入車関係なく、すべての自動車への税徴収を課すことになります。
※1 CKD:自動車を部品に分解し現地で組み立て可能な状態にしてある車
※2 CBU:自動車が完成している状態
ASEAN内での自由貿易は自動車やそれに関連する製造業に従事する企業にとって、より広域のマーケットへ製品を輸出する機会を与えました。自動車メーカーもASEANの国々から低価格の部品を調達することができ、経済規模の拡大によって大きな恩恵を受けることができるでしょう。
成長する部品製造業
自動車産業の発展はマレーシアを「生産拠点」から「主要な自動車部品製造国」へと変化させました。
今日では約800の自動車関連部品工場があり、車体パネルやブレーキ、エンジン、トランスミッション、タイヤ、電子機器に至るまで幅広い種類の部品を製造しています。
増加傾向にある部品製造メーカーは、国内のOEM提供だけでなくASEAN諸国を中心に自社製品を輸出しています。
巨大な投資機会の提供
自動車産業の成長を目指しマレーシアでは幅広く魅力的な投資機会を提供しています。
マレーシア政府は以下の領域での投資を推奨しています。
- 主要部品(例:エンジン、変速装置、シャシー)
- 自動車電子機器(例;エンジン管理システム、自動車インテリジェンスシステム)
- 燃費効率の良いエンジン、またはそれに代わる燃料エンジン
- モジュラー(組立て式)システムインテグレーション
- 国内の技術やエンジン力を高める研究開発
世界的な自動車製造のトレンドであるモジュラーシステム領域では、マレーシアは早くから取り組み成果を上げていました。
例えば、プロトンはワジャモデル(the Proton Waja model)の導入以来、モジュラーシステムの実装において先頭を走り続けています。
中国企業の傘下で復活を遂げる国民車プロトン
過去何年にもわたって、販売不振に苦しんでいたマレーシアの国民車プロトンでしたが、2017年に中国企業の吉利がプロトンの49.9%の株式を取得して以来、取り組んできた経営改革によって着実に成果が出始めています。2019年、販売台数は4年ぶりに10万台を突破して、シェアは16.6%に回復し、ホンダとトヨタを抜き国内2位となりました。プロトンの今後の課題は輸出の拡大となっています。2019年の輸出は約1000台と極めて小さい数字ですが、2027年には40%を輸出する野心的な計画をたててASEAN市場の10%獲得を目標としています。
マレーシア自動車産業のまとめ
今後もマレーシアでは生産効率や品質の向上を目指すとともに、Industry4.0の流れに乗って、工場のスマート化を目指していくことが予想されます。
自由貿易圏などの利点を活かし、プロトンやプロドゥアといったマレーシアの自動車メーカーはASEAN諸国で今後も低価格、高品質の自動車の販売に注力していくと思われます。マレーシアでも日本の自動車メーカーの品質は評判ですが、今後新たな技術開発によって品質が向上していくなかで、マレーシア国内外の自動車メーカーとどういった形で戦っていくのか。もしくは、共存という形を取るのか。今後の各メーカーの動きに注目です。
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資料ダウンロード
より詳しいマレーシアの自動車産業については以下から資料のダウンロードができます。マレーシアの自動車産業(マレーシア投資開発庁)
- 発行元:マレーシア投資開発庁
- 発行年:2018年
- ページ数:12ページ
- 概要:国家自動車政策 ・国内自動車政策(NAP)は、国内の自動車産業を変革し、競争の激しい地域および世界の産業ネットワークに統合するため、2006年に導入されました。 マレーシアの自動車の売り上げ、輸入、輸出 ・現地のオリジナル機器市場に供給するために、特にASEAN諸国に自社製品を輸出する部品メーカーが増えています。
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