東南アジアのモビリティ市場動向2024年版レポートを発表
Vynn Capital、東南アジアのモビリティ市場動向2024年版レポートを発表
Vynn Capital Sdn Bhdは「東南アジアのモビリティ市場動向2024年版」レポートを発表しました。このレポートでは、東南アジアのモビリティエコシステムにおける主要な課題と変革の機会を特集し、電気自動車（EV）、ライドシェアリング、モビリティサプライチェーン（バッテリーの充電および保管を含む）における革新やベンチャー投資の重要性を強調しました。
強力な政府支援がタイ・ベトナムでの電動化を推進、依然として残る価格の壁
Vynn Capitalのチュア氏は、レポートの目的について次のように説明しました。「東南アジアのモビリティは急速に進化しています。私たちのレポートでは、都市化、電動化、投資トレンドといった変化を促進する主要な要因を特定しました」。
レポートの調査結果は、ベトナムとインドネシアが電動バイクやバッテリースワッピングといった電動化技術の新興拠点として注目されていることを示しています。これらの市場は、政府の強力な支援と持続可能な交通ソリューションに対する消費者需要の高まりから恩恵を受けています。
一方で、価格の壁は地域全体の大きな課題として残っています。Carsomeのチェン氏は、「税制優遇措置があるにもかかわらず、マレーシアではEVの価格が最低でも2万2400米ドル（10万リンギット）以上と、多くの消費者にとって手が届かない」と述べました。また、都市部に集中した充電ステーションの整備不足も課題として指摘しました。
特にタイでは、バッテリー寿命に対する懸念が、中古市場の成長を妨げていると指摘。チェン氏は、「中古市場はEV普及全体にとって重要ですが、現状の課題が進展を遅らせています」と述べています。
一方、シム・ダービーのタン氏は、これらの課題に対応するための長期的な戦略の重要性を強調。「シムでは、アフターマーケットソリューションやバッテリーリサイクルを含むEVエコシステムの構築に注力しています」と述べました。同社は、パートナーシップやサプライチェーンの改善への投資を通じて、EVの手頃な価格化を強化する方法を模索しています。
コーポレートベンチャーが推進するモビリティのイノベーション
地域のリーダーとして、シム・ダービーはモビリティ分野のイノベーションにおいて重要な役割を果たしています。タン氏によると、シムはマレーシアにおけるEV車販売の約60％を占めており、その市場支配力を示しています。また、同社はモビリティ関連のスタートアップに7000万リンギット（1568万米ドル）を投資しており、SOCAR、Carro、CarExpert、Carwowへの直接投資に加え、Vynn CapitalおよびGly Capitalという2つのベンチャーキャピタルへのリミテッドパートナーとしても投資を行っています。これにより、EVエコシステム全体でのイノベーションを支援しています。
課題への対応
タン氏は、EVの残存価値が低いことや、バッテリー保証期間後の課題といった重要な障壁に対処することの重要性を強調しました。自身のEV所有経験については、「中古価値が期待外れだった」と述べています。これらの課題は、EVの普及を広げる上で大きな障害となっています。
消費者の「レンジ不安」解消に向けて
消費者が抱える「レンジ不安（充電が足りなくなる不安）」に対応するため、シムはスピンオフ企業であるKINETAを立ち上げました。この会社は自宅およびプライベート充電ソリューションを提供し、公共の充電インフラを補完するものです。この取り組みにより、EV初期導入者の負担を軽減し、普及を促進することを目指しています。
ライドシェアリングと市場機会
レポートでは、地域のモビリティ市場における有望なセグメントとしてライドシェアリングを強調しています。都市化の進行と交通渋滞の増加により、個人車両の所有に代わる選択肢への需要が高まっています。Carsomeのチェン氏は、ライドシェア企業と協力して車両販売およびリース事業を拡大していると述べました。「ライドシェアリングは、当社の広範なエコシステム戦略に非常に適合しています」と語りました。
ライドシェアリングや関連技術への投資は長期的な成長をもたらす可能性がありますが、チュア氏は、この勢いを維持するには継続的な資金提供が必要だと強調しました。
スタートアップのイノベーション推進力
チュア氏は、スタートアップがイノベーションを推進する上で有利な立場にあると述べました。「既存の業界プレーヤーは、現在のビジネスを損なうリスクなしに迅速な変化を実施するには十分に機敏ではありません。同時に、イノベーションを推進するには多額の投資が必要であり、かなりの機会費用が伴います」。一方で、スタートアップはより機敏であり、迅速に意思決定を行い、イノベーションに集中できると指摘しました。
モビリティ課題解決のためのコラボレーションの重要性
パネリストたちは、民間投資家、スタートアップ、政府間の協力が、システム的な課題を解決する上で重要であることに同意しました。チュア氏は、「統一された戦略により、新たな機会が解き放たれる可能性があります。このレポートは、その対話への貢献です」と述べました。
タン氏は、充電インフラの不足や手頃な価格化の課題を解決するために、調整された取り組みの重要性を強調。「これらの課題を解決するには、政府から企業に至るまで、すべての関係者が協力する必要があります」と述べました。
チェン氏も同様の意見を示し、技術提供者とのパートナーシップがコスト削減とアクセシビリティ向上に役立つ可能性があると述べました。協調的な取り組みは、地域全体でのイノベーションと普及を加速する上で重要な役割を果たすでしょう。
将来展望
東南アジアは、若くテクノロジーに精通した人口と支援的な政府政策を背景に、モビリティ成長において有利な立場にあります。レポートは、持続的な投資、戦略的なコラボレーション、統一された政策フレームワークの重要性を強調し、手頃な価格化やインフラの課題を克服する必要性を指摘しています。
これらの強みを活用することで、同地域は電動化とモビリティイノベーションにおける世界的リーダーとしての地位を確立する可能性があります。
