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マハティール首相へのインタビュー マレーシア航空機関誌『Going Place』翻訳から見る今後の動向

マレーシア航空の機内誌である『Going Place』に掲載されているマハティール首相の インタビュー記事を日本語訳しました。

記事元はこちらから(英語)
https://www.goingplacesmagazine.com/exclusive-rock-star-prime-minister-tun-dr-mahathir-mohamad/

今回はこちらのインタビュー記事からマハティール首相の今後の動向を予想してみたいと思います。

 

 

 

マハティール首相ってどんな人?

紛れもなくマレーシアで最もカリスマ性を持ち、人々に愛され続ける政治家、
Dr.マハティールは人々の支持を得て2度目の国家指導者と返り咲きました。

現在、彼が要求される仕事は1981年から2003年の以前首相を務めた時よりも失敗を許されず、
正確さを要求されています。今回はマレーシアの国家設立から56年を祝い、そうした忙しい日々を送る彼から

朝ごはん事情から94歳の世界最高齢の首相についてまで幅広く議論していただき、
それらをマレーシア航空の機内誌である
「Going Place」に掲載することに。

実際にこれらのインタビューを読み、今後マハティール首相がどのような政策を行うつもりなのか。
そして、どのような国を目指しているのか分析していきたいと思います。

マレーシア航空の機内誌に掲載されたインタビュー

 

普段はどのように過ごしていますか?

朝はだいたい6時半くらいに礼拝のために起きます。礼拝が終わったらお風呂に入って朝食を取ります。
朝食は食パンを食べることが多いです。たまにチーズを挟んだりカレーにつけたりして食べます。
 

朝の最初の1杯は何を飲みますか?

コーヒーです。午後1時以降にコーヒーを飲んでしまうと眠れなくなってしますので、
その前までにコーヒーを飲むようにしています。朝は目覚めの1杯です。
 

ブラックコーヒーですか?

砂糖なしでミルクを入れてます。
 

それがマハティール首相の若々しさの秘訣ですか?


すべての人に共通して言えることですが砂糖は身体に悪いです。
年齢関係なく砂糖や炭水化物の摂取は避けるべきです。
 

衰えることのない頭の切れ良さと体力の秘訣はなんですか?


脳みそと身体を使い続けることです。 人間というものは年を取ったり疲れたりすると「横になりたい」「眠りたい」と
考えます。横になったり眠ってしまうと、考えることも、読むことも、書くことも、議論することも、話すこともない
ので脳みそを使わなくなります。筋肉も同様で、もし使わなければ締まりのない体になっていきますよね。

反対に本を読んだり、友人と語りあったりすれば、頭は働き続きます。頭を働き続けることで、多くの情報を蓄える
ことができ、情報を結び付け思い出すことも可能です。しかし、もし使わなければ単語でさえなかなか思い出せない
ことも多くなります。
 

 

 

今、私たちが住んでいる世界はデジタル化していて、常にスマートフォンやPC等のデバイスから情報を得ています。その結果、本を読む機会がない思うのですが、これについてどう考えますか?

私は現在も継続して本を読んでいます。物語を読むことが多いです。何かしらの本を毎日読むようにしています。
もちろん、書類なんかも読んでいます。読書をすれば、言葉1つ1つがあなたの記憶を蘇らせることでしょう。
まるで誰かと頻繁に会ったり、3、4年ごとに誰かに会う感覚に近いです。
時々、名前を思い出せなかったり彼に気づかなかったりするでしょうが。
 

今年の9月16日で国家設立から56年を迎えることになります。首相は1963年のマレーシア国家建立の際38歳だったと思いますが、当時どのような国になって欲しいと考えていましたか?


私たちが独立に向けて奮闘していた時、国の発展なんて考えてませんでした。その当時は、ただ自分たちの国を
自分たちのルールで統治し、自分たちの政府機関によって自分たちの未来を決めたいという思いだけでした。

 

新しいマレーシアという国をどのように作っていくかという戦略は当時から持っていましたか?

英国の統治下だった頃、政府に対して何か考える人も多くなかったし、政府に対しての不満というものも人々の中にはそれほどなかった。「政府が国民のために何をすべきか」という考えはマレーシア独立後にやっと始まったものでした。

政府が最初に気づいたことの一つが「人々が土地を持っていない」ということでした。当時人々を雇用する工場など
なく、生活費を稼ぐ手段は稲やゴムの木を育てるための土地を持つことでした。そのため人々はジャングルに入り、
木を切りゴムの木を植えました。しかしながら、そうした人々の多くはマラリアに感染し命を落としました。

そうした現状を解決するため政府は、FELDAという計画を発表しました。政府は森林を一掃し、ゴムの木を植え、
開拓者たちを呼びました。そうした行動を見た人々が「民主主義国になり、人気を得、人々に働きかけることで
政府は国民のために何かしてくれるのだ。」人々は考え始めます。そして、選挙の投票者たちは1票が重要であり、
投票によって政府を動かすことができることに気づきました。時を重ねるごとにそうした要求は増えていきます。
人々はモスクを道の建設、電気や水道の整備を願うようになりました。
 

そうした歴史の上に現在の私たちが存在するわけですが、ご自身が引退しなければならなくなったときは悲しかったですか?


私は2003年にリタイアした時、もう2度と戻ってくることはないだろうと思っていました。私は休みたかったですし、
本も書いてみたかった。しかし、私が首相を退いて1週間後、新政府はシンガポールとマレーシア間をつなぐ
鉄道プロジェクトを引き続き行っていくという約束を破りました。これを受けて、多くの人々が私に会いに訪れ、
「どうにかしてください」と私に訴えかけてきました。しかしながら、私はすでに首相ではなかったので
どうすることもできませんでした。それでも、人々はあきらめず私が新政府に助言をできるように色々した
ようですが、何も効果はありませんでした。
 

 

 

世界で最も高齢の首相であることを嬉しく思いますか?


若い首相と言われたかったですが、実際のところ、私は年を取っています。幸運なことに、私はまだ働くことが可能
ですし、人々も私を信じて指導者であることを期待してくれています。だからこそ、私は人々の期待に応えるために
野党となりました。以前は、国民は私を独裁者と呼び批判しましたが今は国の主導者として私を選んだわけです。

 

夜、眠れなくしているものはなんですか?


私が懸念している多くの課題です。直面している問題をどうやったら解決できるか考えながら眠りに就くことも
あります。次の日にスピーチをしなければならない時はスピーチの内容を考えています。

 

今日の若者は様々な問題に直面していますが、マハティール首相は彼らの将来に何を期待しますか?


今日の若者たちは私の貧しかった若い頃に比べれば、それほどプレッシャーを感じていないと思います。
当時の私たちが望んだことは勉強をすること。そしてもし可能であるならば、もっと稼げるようになるために
大学に行くことでした。私が医学部に通っていた頃、70人以上いる生徒の内マレー系マレーシア人はたったの7人でした。

しかし、今日では数千人の人々が奨学金制度を利用し大学に入学しています。欲しいものが手に入ることが当然のことと考えます。 人々はお金を持つようになったので人生はより簡単になりました。若者の中には、親からお金をもらいバイクを買い、そしてその買ったバイクを有用に使わずに、スタントパフォーマンスをしたりするのです。
 

 

 

マレーシア経済は大きな加速を求められています。FDIsは低いですし、株式市場は長い間期待されている結果を出せていない。マレーシアは成長を維持するために石油製品やパーム油、消費支出にこのまま頼り続けることはできるのでしょうか?


パーム油やゴムについて私たちは正しいことをしていなかったと考えています。
私たちはゴムやアブラヤシを育てることで生計を立ててきましたし、
2、3エーカーの土地を持つ人々がそれなしでは生きて行けないことに気づいたのは後になってからです。

一方で英国人は1万~2万エーカーを持つビックプレイヤーとして土地を開墾しお金を生み出していきました。
そうした中でスモールプレイヤーは十分なお金を稼ぐことができないのが実情です。
その結果、現在私たちは農業における戦略を見直している段階にあります。
産業においては、私たちは人々の雇用を生み出すためFDIsを通してこれらを成し遂げることを決めました。


しかし、高水準の収入を提供する産業はITや新しい技術セクターです。これらの新しいセクターで活躍していく
ために、人々はそれらに適応し、新しい技術を学ばなければなりません。以前は生産のほとんどを海外企業に頼っていたマイクロチップについて例にあげれば、現在ではマレーシアの現地企業が生産することが可能になっています。

私たちはAI事業に参入したいと考えている一方で、それを成し遂げるには時間がかかることも知っています。多くの投資提案がなされているのも事実ですが、それに必要な労働力を提供しなければなりません。私たちは国民が新しい技術に精通し、その結果彼らが新しい産業に従事していくことを望んでいます。マレーシアでは年間300億リンギット(73億ドル)にのぼる大きな投資が行われているが、それらはメディアに取り上げられていません。

 

才能を持つ人の育成というのはマレーシアにおける課題の一つですね。政府もこれに対して何か策はあるのでしょうか?


才能持つ人がいないのではなく、才能を持つ人のための仕事がない状態です。もし彼らの資格に見合った仕事が
なければ、彼らは働きません。例えば、韓国や日本に派遣しマレーシアに戻ってきた人材は多くの技術や知識を
持っていますが仕事を見つけることができません。なぜなら、マレーシアには彼らに適した仕事がなく、結局彼らは
また国外へと働きに行ってしまいます。

そうした彼らの中には結婚し家族がいる人ももちろんいます。だからこそ、私たちは高技能産業をより発展させ、高い技術や知識を要する人々がマレーシアで働き暮らせるようにしなければならないのです。
 

 

 

マレーシアの観光産業についてどう思われますか?マレーシアの隣国に比べてダイナミックさを感じないように思われますが、マハティール首相はこれについてどういった策をお持ちでしょうか?

実行に至るまで多くの行政手続きを必要としており、それらを減らすことが求められています。

また、ある場面では、親切な対応が見られない。他国では常に笑顔で観光客をもてなしますが、マレーシア人にそういった場面はあまり見られません。

以前から政府は観光客を魅了するたくさんの場所を建設してきました。ランカウイ島を例に取ると、以前は年間1万人ほどしか訪問者がいなかったにもかかわらず、現在では年間320万人もの人が訪れます。なぜなら私たちが「製品」を作り、そしてより魅了するために作り続けているからです。政府にはテーマパークの建設等すべてを行う十分な資金がないものの、民間企業が行っていくことを期待しています。

 

マレーシア航空を使用した際の思い出はありますか?


最近は毎回マレーシア航空を使っています。機内食が美味しいのはもちろんのこと、首相としてファーストクラスを利用することができますからね。

 

ブリティッシュ・エアウェイズやルフトハンザドイツ航空のように長い間政府から距離を置いていた航空会社もあります. マレーシア航空を国営企業として経営するのは愛国心や自尊心を高める以上の価値があるとお考えですか?



私たちは依然として国営航空を経営しています。しかし必ずしも政府が経営権を所有すべきだとは考えていません。1国1国営航空といった時代は終わりを迎え、人々はたくさんの航空会社を選択できることができるようになりました。 それらの選択肢の一つとして、国のシンボルである国営航空企業があっても良いのではないでしょうか。しかし、国営航空企業の運営は民間企業が行っても良いではないかと思っています。
 

 

 

次の首相に政権を引き継ぐまでにどんなビジョンを成し遂げたいですか?

私は国が抱える借金のほとんどをなくしたいと考えています。私は1兆リンギットもの借金を前政権から引き継ぎました。経済成長を果たすことでそれらの一部を返済してきました。その他にも政府の粛清を行ってきました。


最後に言うならば、政府に頼りすぎてはいけないことを人々に教えなければならない。
もちろん、私たちがやらねばならないことは行っていきます。
しかしそれ以上に人々は政府に依存することをやめなければならないと考えています。
十分に稼ぐことができないのなら、人々は自分たちの生産性や技術力を高めなければなりません。
そうすることで国は豊かになっていくのです。
もし政府にすべてのことを頼り切ってしまえば、裕福にはなれません。ただ政府が損失を被るだけです。

 

最後に、マハティール首相の結婚のエピソードは私たちにとって理想的な関係として憧れの的ですが、夫婦円満の秘訣はありますか?

寛容であり続けることです。奥さんだって完璧な人間ではありません。もちろん夫も完璧な人間ではないです。だからこそ、妻と夫の両方がお互いの考えや性格に寛容でなければならないと思っています。例えば、私はいつも時間を守って行動するのですが、私の妻はいつも遅刻してきます。当初は口論になりましたが、妻の方も行動を変える気はないようでした。なので、私は彼女の遅刻にできる限り目をつぶり、妻は私に「早く、早く、もう時間がないよ」と急かされることを耐えるようになりました。
 

マハティール首相に聞く一問一答

1、 口癖はなんですか?

「Work」です。

 

2、 ストレス発散はなんですか?

読書。

 

3、 休暇で訪れた国で最も良かった場所は?

日本の福岡です。

 

4、 今まで買った中で一番高いものは?

医師をしていた時に買ったアメリカの自動車会社が製造しているポンティアックです。 当時、12,000リンギットで購入しました。6人乗りで前席は3人乗れるように長椅子使用になっていました。

 

5、 宝物はなんですか?

私の孫たちです。
 

6、好きな作家は誰ですか?

ウィルバー・スミスとジェフリー・アーチャーの作品を読みます。お二人とも有名ですよね。

 

7、 本は何度も読み返すタイプですか?

はい。時々2冊同時に読み返すこともあります。

 

8、 生きがいはなんですか?

働くことです。働くことが大好きです。

 

9、 どういう人が好きですが?

正直な人です。

 

10、 不快に感じる人はどんな人ですか?

一生懸命に働かない人です。

 

11、生きる上で必要な物を3つ教えてください。

食べ物なしでは生きていけませんね。あと怠惰でいることも無理です。あとは、頭をいっぱいにする何かが必要不可欠です。

 

12、自分の携帯電話に対してどう思いますか

私は頻繁に自分の携帯を使わないですね。誰も私の電話番号を知らないんですよ。

 

13、自分の携帯電話番号を覚えてますか?

覚えてないです。

 

14、誰も知らないマハティール首相について教えてください。

私は一人で過ごすことが好きです。しかし、職業柄人と過ごすことが多いです。首相という職業は一人で過ごすという私の好きなことには当てはまりませんが、やらなければならないことだと考えています。

 

15、もしマハティール首相についての映画を作るなら、どのように製作してほしいですか?

真実を語って欲しい。「彼は凄い男だった」とか飾り立てるのではなく、ただ真実を伝えて欲しいです。

 

まとめ

今回のインタビューを受けて重要なポイントを3つ挙げたいと思います。
1つ目が、マハティール首相の勤勉さ。口ぐせとして「Work」を挙げていることや不快な人として「怠惰な人」と挙げるように、彼自身も努力家であり激動の時代を学ぶことで乗り越えきました。そうした彼が現在懸念しているのが「マレー系マレーシア人の労働」でしょう。マハティール首相は度々メディアで優遇政策で守られているマレー人に対してコメントしています。自身が努力してきたからこそ、働かないマレー人に不満を持つのはわからなくもないです。
他民族からも不満の声も多いマレー優遇政策。今後マハティール首相がどのように対応していくのか注目です。


2つ目に、マハティール首相の【政府】の役割について。2019年8月31日に発表された「共通繁栄ビジョン(The shared prosperity vision)」でも繰り返し強調されていたことですが、あくまで政府はサポートで「国民全員」で繁栄を目指すべきと話されていました。インタビューの中でも「政府に依存するのをやめなければならない」と話していた通り、国民自らが成長の意識を持ち経済発展を目指していくことがマハティール首相が思い描いているシナリオです。
国民の意識を変えるには膨大な時間とエネルギーがかかります。2度目の首相として現実と理想の中でどこまでやれるのか今後に期待したいと思います。


3つ目が若い世代への想い。第四次産業革命の中、マレーシアに限らず求められているのがデジタルテクノロジーに対応できる人材です。マレーシアでもそうした高度な専門知識を持つ人材が求められる一方で、そうしたポジションが少ないこともマハティール首相が自身今回のインタビューで語っていました。EコマースやIoT事業といったIndustry4.0についてマハティール首相も再選当時から力を入れて取り組むことを発表しており、この分野への投資は増えていくことが予想されます。


今回はマレーシア航空の機内誌である『Going Place』を元にマハティール首相を分析していったわけですが、
Connection では政府の政策や経済情報について情報を随時発信しています。


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